子育て生活での変化

出産後のほうが大変だという先輩の脅しが冗談ではなかったことを身をもって知ったのは、1カ月間の育休に入ってからすぐのことだった。

生まれてきた娘・果歩はとにかく夜泣きがひどかった。交代であやそうとルールを決めてやっていたが、家中に響き渡る泣き声のせいで自分の番でなくとも眠ることはできない。毎日寝不足だったが、日中も3時間おきにミルクをあげないといけないのでうっかり横になることもできない。座ったら最後、意識が飛んでしまいそうなので、裕樹は1日中家の中で立っていて、和室のたたみが擦り切れるのではないかというほどぐるぐると徘徊し続けた。

体力にはそこそこ自信があるほうだ。それに今は出産を経て、美織の体はぼろぼろだ。自分が頑張らなければいけないと、裕樹は自分に言い聞かせて眠たい気持ちを奮い立たせた。

「ちょっと寝たら?」

寝室でとっていた仮眠から目を覚ました美織が、和室を歩き回っている裕樹に向けてひそめた声をかけた。果歩はほんの数分前にようやく寝たところなので、次に泣き出すまでにはまだ猶予がある。

「じゃあお言葉にあまえようかな」

裕樹も同じように声をひそめながら言う。寝室に向かおうとした瞬間、「あ、そうだ」と美織が思い出したように普通のトーンで声を出し、裕樹は果歩が起きてしまうのではないかとほんの一瞬どきりとする。

「……そういえば、最近たばこ吸ってないよね?」

「ああ。もう吸ってない。たばこは全部捨てたんだ」

裕樹がそう言うと美織は目を丸くした。

「……そうなの? ……辛くない?」

裕樹は苦笑いをして答えた。