家族にまで強いた徹底的な倹約生活

僕の「NISA貧乏」は、そのうち深刻な強迫観念へと変わっていった。

「外食? 家族で1回1万円かかるとして、それを投資に回したら20年後には複利でいくらになるか考えてみた?」

真由美がたまに漏らす愚痴を、僕はそんな理屈で封殺した。

食卓から彩りが消えた。スーパーの特売品、見切り品の鶏むね肉、そして安売りの納豆。世帯年収900万円がありながら、真由美は自分のパート代すら自由に使うことすらできない。100円のモヤシの値段に一喜一憂し、ボロボロになった下着を買い替えることすら僕の顔色を伺って躊躇するようになった。

僕は自分の小遣い5000円という「我慢」を盾に、家族にも徹底した禁欲を強いたのだ。

「今、生きている心地がしない」妻が吐き出した本音

「……ねえ、あなたは何のために働いてるの?」

ある夜、真由美が絞り出すように言った。

その日、歴史的な株価の暴落が起き、僕たちのNISA口座からはわずか数日で、それまで必死に積み上げてきた含み益がすべて吹き飛び、真っ赤な元本割れへと転落した。血の気が引く僕に対し、真由美は力なく笑った。

「あなたの言う『将来』のために、私たちは今、生きている心地がしない。イチゴ1パック買うのに手が震える生活が、あなたの言う『幸せな老後』への準備なの?」

僕は何も言い返せなかった。画面の中で真っ赤に染まった評価損の数字が、僕たちが犠牲にしてきた「今日」の残骸に見えた。

「将来のために、今は死んだように生きろって言うつもり?」

冷え切った寝室に、彼女の拒絶の言葉だけが響いた。

●それでも入金力アップに固執する夫……。絶望した妻が取った行動とは? 後編【NISA貧乏】倹約生活に耐えられず去った妻…絶望の底で夫が気付いた「家族で食べる300円のアイス」の価値で詳説します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。