いちご狩りデートは段々と…

デート当日は雲一つない快晴で絶好のデート日和だった。

博樹は車を持っていなかったのでレンタカーを借りて、百合子の家まで迎えに行く。マンションの前に着いて連絡をすると、正面玄関から私服姿の百合子がやってきた。薄手のニットにベージュのロングスカート、スニーカーを履いた百合子は職場で見るよりも気品を感じて素直に美しいと思った。

「ごめんね。わざわざ家までありがとう」

「い、いやいいよ。じゃあ行こうか」

博樹は緊張感を隠しながら応じて車を発進させた。

「でもどうしてイチゴ狩りになんて行きたいと思ったの?」

「なんかSNSで見たんだよね。とっても素敵な場所でカップルが楽しそうにイチゴ狩りをしてるのがいいなって思って」

博樹は百合子の言葉に納得する。そして頭の中でイチゴ狩り後のコースをシミュレーションしながらイチゴ農園へと向かった。

農園は平日にもかかわらず、家族連れなどでにぎわっていた。さすが話題の場所なだけあるなと思いながら博樹は作業着姿の管理者から説明や美味しいイチゴの見分け方などを聞き、カップを持って農園に入りイチゴ狩りを始めた。

博樹はイチゴ狩りというもの自体が初めてであまり興味もなかったのだが、採れたてのイチゴは新鮮で甘みもしっかりありその美味しさに感動を覚えた。時間の限り味わおうと夢中になって美味しそうなイチゴを探していると背後から百合子の悲鳴が聞こえた。

振り返ると百合子が尻もちをついていた。

「ど、どうしたの?」

博樹はすぐに百合子に駆け寄った。百合子は慌てて立ち上がった。

「いや、ちょっとハチがいたから驚いちゃって……」

イチゴを栽培しているのでビニールハウスの中には受粉用のミツバチがいるのだが、それに驚いてしまったようだった。転んだ百合子に周りの子どもたちがクスクスと笑っている。博樹も普段は見られないミスをした百合子の姿に頬を緩めた。

「大丈夫? ハンカチ持ってる?」

カップに入っていた練乳が百合子の洋服にこぼれていたので博樹はハンカチを差し出したのだが、百合子はこちらに鋭い視線を向けてきた。

「……何で笑ってるの?」

「……え? い、いや笑ってるというか」

「心配してくれないんだ」

それだけ言うと百合子は黙ってイチゴ狩りを再開させた。何度か博樹は美味しいねと声をかけたりしたものの、百合子の返事は簡素で冷たく感じられた。

予約しておいた評判のイタリアンの店に行って挽回しようとしたのだが、それでも百合子の機嫌が戻ることはなかった。