昼休憩の時間になり、博樹はいつものように同期入社の徹と2人で外に食べに出た。

行く店はだいたいいつも同じ蕎麦屋で、あまり混んでおらずゆっくりできるのが気に入っていた。

「今度、2人揃って有給取ってどこに行くんだ?」

「え? もう徹の耳にまで入ってんの?」

博樹は驚きながら聞き返す。徹は真面目な顔でうなずいた。

「でもまさかお前と桜井が付き合うってのは意外だったな。同期入社で一緒に研修とか受けてたけど、2人は合わないと思ってたなぁ」

「そうなの? どこが?」

「いやまあなんとなく波長がさ。桜井って同期の中でも目立つだろ。仕事もできるし気も強くてちょっと近寄りがたい感じあったじゃん」

博樹はそんなことないだろうと心の中で徹に反論した。

仕事がつないだ2人の関係

現在、博樹には同期入社で同じ営業部に勤める桜井百合子という恋人がいた。徹が言う通り、百合子は仕事ができて華もあり、一目置かれる存在だった。博樹もあまり関わりがなかったが、あるとき百合子がプレゼンの前日に見つかった資料の不備の修正に追われていたことがあり、博樹が一緒に残って作業を手伝ったことをきっかけに一気に距離が縮まって、交際することになったのだ。

「それでどこに行くんだよ?」

「イチゴ狩りだよ。百合子が興味を持ってたからね。なんか人気のところがあって平日しか予約が取れなかったからお互いに有給を取ったんだけど、まさかそのことを知られてるなんて……」

2人の交際は瞬く間に部署内で知られることになった。百合子が同僚や先輩に話したのが理由だ。もちろん隠す必要もないし、むしろ上司や同僚たちには応援してもらっているのでありがたい部分もある。ただここまで筒抜けだと少し気恥ずかしい気持ちがした。

「まあまあ。でもがっつりデートは初めてだろ? 楽しんで来いよ」

徹に言われて博樹はもちろんとうなずく。百合子とのデートが待っているというだけで今はどんな仕事も頑張れる気がしていた。