夫の本音が露呈した夜

受講を終えて家に帰るとソファに座っていた幸平が美菜に声をかけてきた。

「なんで勝手に講座を受けてんだよ? やらないって約束したはずだよな?」

眉間にしわを寄せて幸平はこちらを見てきた。ローテーブルの前に封筒が置かれてあった。そこには受講された方限定のお知らせとしっかりと書いてある。

「約束なんてしてないわよ。あなたがダメだって言っただけ。そもそも私が何かをするのにあなたの許可なんて必要ないでしょ」

「いや俺たちは家族だろ? なんでそんな勝手なことをするんだよ?」

「もちろん分かってるわ。でも私は自分が稼いだお金で受講しているの。仕事を休んだりしてるわけでもないし。何の問題もないじゃない」

「今はたまたま問題がないってだけだろ?」

幸平は何があっても認めようとはしない。美菜は質問返しをする。

「じゃあ例えばどういう問題が起こると思ってるの?」

「雪の世話はどうするんだよ? 最近は友達と遊んでるかもしれないけど、家にいるときだって出てくるぞ?」

幸平の疑問に美菜は怒りを覚えた。

「雪の世話って私だけがやるべきことじゃないでしょ。あなたが家にいるのならあなたがやればいいだけのことじゃない」

「俺だって外出しないといけない日はあるだろ」

「それってどういう理由で?」

美菜の追求に幸平は言いよどむ。

「それはいろいろと付き合いとかさ……」

「あなたは休みの日に好きなことをやっていいのに、私はダメってこと?」

そこで幸平は大きくため息をついた。

「あのさ、俺は平日ずっと仕事をやり続けてるわけ。だから休日くらいはゆっくりさせてくれよ。そうやって英気を養わないと仕事なんてやってられないって。そこら辺は役割分担でやっていくべきだよ」

美菜は思わず幸平に詰め寄った。

「役割分担って何? 私だって平日は仕事をしてるんだよ? それなのにどうして休日はあんたは好きなことして、私はやっちゃダメなの? 私にだってやりたいことをやる権利はあるはずだよ?」

「そもそも美菜が仕事をする必要なんてないんだ。俺の稼ぎだけでやっていけてるのにさ。やらなくていいことをやってるんだから、その分休みの日は子供の世話や家事をちゃんとやるべきだろ? これ以上余計なことをするんじゃないって俺は言ってるんだ……!」

苛立った口調で話す幸平を見て美菜は何も言えなくなった。

論破されたということでは全くなかった。ただ幸平は美菜がやっていることを無駄だと思っていたということに驚き、言葉が出なかった。

美菜には幸平という人間が一瞬で分からなくなってしまった。こんなにも自分勝手な考えを押しつけてくる人間だったのだろうか。

こんな人に屈してしまったら自分が自分ではなくなってしまうと、美菜は思った。