最優秀賞:「母から受け継いだ資産 ~江戸っ子気質の娘からの手紙~」(ニックネーム:かっつえ)
もともと私はわりと浪費家だ。幼少期から小遣いをもらうとすぐに使い切ってしまう、まるで「宵越しの銭は持たない」江戸っ子のような子であった。
一方、私の母は堅実を絵に描いたような人だった。20歳で結婚し、少ない生活費をやりくりしながら三人の子どもを育て上げ、私たち姉弟を全員、借金なしで大学まで出してくれた。母が人生でローンを組んだのは、家を購入した時の一度きりだという。一時期、保険外交員として働いていた母は、その時に得た金融知識を生活の知恵として最大限に活かし、教育資金を捻出してくれたのだ。
実家暮らしであった私が社会人になった際、給料口座は母の管理下におかれた。私は月々の小遣いをもらうという、幼少時と同じ形態で生活することになった。母は娘の江戸っ子気質を誰よりもよく理解していたのである。
やがて転勤に伴い一人暮らしを始めることになり、いよいよ口座が自分の手元に戻ってきた。その際も、母の教えは徹底していた。「昇給したらその分を積立貯金に回し、以前の手取りで生活すること」「ボーナスにはなるべく手をつけないこと」「新天地での特別手当は全額、積み立てること」。
その教えを忠実に守り、8年間ひたすら積み立てを継続した。再び実家近くへ転勤で戻ることになったとき、私の手元には「ひと財産」と呼べる資金が築かれていた。
さて、この資金をどうすべきか。ただ貯金するだけでなく、より効率的に資産を運用する方法はないかと考えた。株式投資の本も読んだが、多忙な業務の中で市場をこまめに確認する時間はなく、まとまった資金を一度に投入する勇気も持てなかった。そんな折、書店で手にしたのが「投資信託の積み立て」を勧める一冊だった。専門的な知識や時間に自信がなくても、投資信託で運用をプロに任せ、ドルコスト平均法で時間を分散して積み立てていく。この手法こそが、自分にとって最も継続可能な道ではないか。そう思い立ち、私の投資信託積立が始まった。
積み立てを始めた当初はリーマンショックの余波で評価額が安定せず、不安な日々を過ごした時期もあった。しかし、3年ほど経つと評価益が増え始め、当時のゼロ金利政策下において預金よりも「お金が育つ喜び」を実感した。その後、NISA制度が始まり、現在は新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠を活用する日々を送っている。長年の積立経験のおかげで、市場が下落しても焦らず、上昇しても浮足立たない投資家としての心構えが自然と身についていた。また、働きながら通った大学院の経営学の授業でコーポレートファイナンスを学んだことも、大きな支えとなった。世界市場の長期的な経済成長や労働力人口の推移という理論的背景を理解できたことで、今は何があってもどっしりと構えていられる。
少し残念に思うのは、このNISA制度が自分の若いころからあったら、ということだ。あの新天地での特別手当を非課税投資枠で運用できていたら、とつい考えてしまう。だからこそ、自身の経験を振り返り、若い世代の方々には「一日でも早く、NISAでの積み立てを始めてほしい」と切に願う。
最後に、母へ。
お母さん、ありがとう。あなたの厳格な管理と教えがあったからこそ、投資の種銭ができ、今の私があります。おかげさまで、老後の備えも順調です。今度は私が、お母さんの面倒をしっかりみる番だね(もっとも、お母さんのことだから、自分でもだいぶ蓄えているのだろうけれど)。
優秀賞・佳作の作品もFinaseeにて紹介予定、乞うご期待
優秀賞、佳作の各作品名と受賞者名(ニックネーム)は次のとおり。作品は順次、Finaseeにて近日公開予定となっている。
優秀賞:「25歳の私への感謝状 お姉さま方の背中」Y.K
佳作:「離れてしまった職場の同僚 ~投資信託と、とりとめのない思い出ばなし~」 F.W 「看護師として、母としてつなぐ18年のバトン」10時間睡眠 「お金は使うためにある」M.S 「投資信託はプロジェクトチーム」C.U 「積み立て続ける娘の未来」あや (敬称略)
■「投資信託で長期投資! エッセイ・コンクール」(一般個人部門) 【主催】想研 【協力】NPO法人DC・iDeCo協会 【特別協賛】キャピタル・インターナショナル 【結果発表】2026年2月13日
