NISAを起点に考えるiDeCoの位置づけ
ここで、NISAと並び資産形成の土台として活用されているiDeCo(個人型確定拠出年金)にも目を向けてみたい。というのも、実はiDeCoは、2027年に制度の大幅な拡充が予定されている。具体的には、掛金上限の引き上げや、加入可能年齢の延長が検討されており、制度の使い勝手はこれまでとは大きく変わる可能性がある。
自由度の高いNISAと比べ、年齢制限と流動性に制約のあるiDeCoは後回しにされがちだ。しかし、制度改正後のiDeCoは、従来のイメージとは異なる制度へと姿を変える可能性が高い。
そもそもiDeCoの最大の特徴は、掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税となる点にある。この「積み立てる段階で節税効果が確定する」という仕組みは、保有資産を売却したり、配当・分配金を受け取ったりして初めて非課税の恩恵を受けられるNISAとは、制度設計の思想が異なる。
こうした仕組みに加え、先述した通り、2027年以降は制度面での拡充が予定されている。会社員(第2号被保険者)の掛金上限は月6.2万円(現行月2.3万円)※、自営業者(第1号被保険者)は月7.5万円(現行月6.8万円)へと引き上げられる方向で検討されており、加入可能年齢も70歳まで延長される見通しだ。拠出できる金額が大きくなれば、それに比例して毎年の所得控除による節税効果も拡大する。今後の論点は、「iDeCoを使うべきかどうか」ではなく、「老後資金として、どれだけの金額をiDeCoで積み立てるか」に移りつつある。
※勤務先に企業年金がない場合。企業年金のある会社員の場合、現行は月2万円で、拡充後は他制度の掛当相当額と合算して月6.2万円になる予定。
また、今回の制度拡充は、50代以降の層にとっても無関係ではない。iDeCoは若年層向けの制度と捉えられがちだが、加入可能年齢が70歳まで延びれば、50歳から始めても、公的年金に加入している期間中(原則69歳まで)は拠出が可能となる。所得税率が高くなりやすい世代ほど、掛金の全額所得控除による節税効果が大きくなるという点は見逃せない。
老後資金の準備を、節税と運用を組み合わせた長期戦略として捉え直すという点で、iDeCoは、NISAと優劣を競う制度ではなく、NISAを起点とした資産形成の延長線上に位置づけるべき制度といえる。
2026年は「待つ年」ではなく「設計する年」
iDeCoの制度改正まではまだ1年弱あるが、現時点で準備を進めておいた方が良いだろう。その意味で、2026年にやるべきことは明確だ。世帯単位で、NISAを含め、年間どれだけ投資に回せるのかを整理することである。年間の投資額を把握しておけば、新たな制度がスタートした際にも無理なく活用できる。したがって、2026年は焦ってNISAの投資額を増やす年ではない。
そもそも資産運用とは、「お金を今使うか、それとも将来使うために取っておくか」という選択の違いにすぎない。将来のために取っておくと決めたお金を、現金のまま置いておくのか、時間を味方につけて運用するのか。その過程を後押しする制度がNISAやiDeCoであり、制度を使うこと自体が目的になってはいけない。「いつ、何のためにお金を使いたいのか」から逆算し、どの制度をどれだけ使うかを考える。その姿勢こそが、制度拡充期における資産形成の軸となるだろう。
