2025年11月19日、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントは、東京証券取引所に米S&P500指数や金価格などを連動対象とする国内籍ETFを5銘柄上場した。同社はこれまで重複上場で3銘柄を東証に上場していたが、国内籍ETFの上場は初である。その狙いや今後の意気込みなどを、日本法人代表取締役社長の越前谷道平氏、同チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO)の新原謙介氏に聞いた。

――先般、初めての国内籍ETFを5本同時に東証に上場しました。その狙いは?

越前谷  東証上場という形で国内籍ETFを5本同時上場したのは、世界水準の良質なETFを、低コストで日本の投資家に届けたいという狙いがあります。

たとえば「ステート・ストリート・スパイダーS&P500ETF」の為替ヘッジ有りと無しの2本の信託報酬率は、税抜きで年0.0275%ですが、同指数に連動する他の東証上場ETFと比べて明らかに低コストです。やはり資産形成を行う際に、コアとなる資産クラスについては、できるだけ良質のETFを低コストでお届けしたいという、当社の本気度の現われとお考えください。

――新規上場ETFの中には金価格を連動対象とするものも含まれます。

越前谷  何となくお気づきの方もいらっしゃると思うのですが、今、世界ではその深いところで、ゆっくりと構造的な変化が起こっています。たとえば、ブレトンウッズ体制のもと、盤石と思われてきた「基軸通貨・ドル」の信認が、徐々に低下しつつあるのはその典型例でしょう。ここにきて金価格や不動産価格が上昇しているのは、通貨価値がそれだけ後退しているからと考えることもできます。

このように、深いところでゆっくり起きている構造的な変化がある半面、表層的なところでは、逆に激しい動きが生じています。それは米中貿易摩擦やトランプ関税、あるいは地域紛争などであり、こうした世界の深層と表層とで生じている動きが、お互いに共鳴し合う時代において、資産保全を図っていくためには、伝統四資産である外国株式、国内株式、外国債券、国内債券に加えて、金も保有するのが有効であると考えています。

代表取締役社長 越前谷道平氏

――S&P500への連動を目指すETFに加え、「S&P500高配当指数」に連動するETFも上場しました。その狙いについても教えて下さい。

越前谷  これまで金利のない世界だったのが、金利のある世界へとレジームが移行していくなかで、株式に投資しつつ、一定水準以上のインカムが得られるエクスポージャーに対するニーズの高まりに対応するためです。具体的には、S&P500に採用されている銘柄のうち、高配当企業でポートフォリオを構築しています。

新原  米国株式は個人の資産形成において根幹を担う重要な資産クラスではあるものの、このところ「S&P500は割高なのではないか」「GAFAMに見られるような特定の個別銘柄に偏り過ぎているのではないか」といった声も、投資家の間から聞こえてくるようになりました。そのなかで、ポートフォリオを少し調整したいと考える人も、徐々に増えつつあります。

S&P500は大型かつグロース企業がメインであり、それに対して割高ではないかという声が出てきたなかで、S&P500高配当は配当利回りが高いという特性だけでなく、大型というよりは中型であり、グロース企業というよりは割安で、テクノロジー企業の比率も低めです。

もっといえば、利益を次の成長への投資に回すよりも、株主に還元しようということですから、成熟産業が多いという特性も併せ持っています。その意味において、スタイルを分散させることの一環になると考え、ラインアップに加えました。なお、同指数は、S&P500採用銘柄のうち、予想配当利回りで上位80銘柄に均等投資するという、シンプルなルールで運用されています。指数の配当利回りは、1%台前半のS&P500に対して4%台後半です。

チーフ・インベストメント・オフィサー(CIO) 新原謙介氏