老後の生活を支える有力な手段の一つである確定拠出年金(DC)には、個人が加入するiDeCo(イデコ)と企業の従業員が加入する企業型の2つの制度があります。9月16日は2016年に個人型DCの愛称が「iDeCo」に決まった記念日です。両制度の活用と資産運用の必要性を考えるきっかけとして、FinaseeではNPO法人確定拠出年金教育協会の協力のもと、「iDeCo・企業型DCショートエッセイ」コンクールを開催しました。全国の皆さまからご応募いただいた「iDeCo」「企業型DC」に関するご自身の気持ちをつづった力作から、栄えある優秀賞に輝いたニックネーム千奈美さんの体験談をお届けします。
先輩の一言が変えたiDeCoへの道、多くの人に伝えたい自助
10年間働いても、私の通帳に退職金が振り込まれることはなかった。
初めて勤めた職場に退職金制度はあったものの、支給条件の年数に届く前に退職。その後8年半は、退職金制度のない職場で働き続けた。
そこを辞め失業保険を受給している今、将来の生活に対する不安がじわじわと押し寄せてきている。
少子化が進み続ける日本で、私たちの世代はどのくらい年金をもらえるのか。「老後2000万問題」の話題も耳にするが、その金額を自力で積み上げられるのか。そして本当にその額で足りるのか。
気づけば不安ばかりを数えていた。
定年を65歳という基準で考えるなら、私がその時を迎えるまで、あと30年と少し。
今から何をしなければならないのか。何ができるのか。真剣に向き合うときが来ている。
「ここ、退職金ないじゃん。今から備えておかないといけないと思って、始めたんだ」
iDeCo(個人型確定拠出年金、イデコ)について、前職の先輩がそう言っていたのをふと思い出した。
制度の存在は認識していたが、「面倒そう」「始めるなら、勉強してからでないと」と思いながら避けてきた。
そのiDeCoを今、ようやく調べ始めている。
自分で老後資金を積み立て、運用しながら準備する仕組みであること。掛金は全額所得控除の対象となり、運用益が非課税であること。iDeCoは自分だけの「退職金」として重要な役割を果たすこと。転職や離職をしても積み立てた資産は守られることなどが私にとって何より魅力だった。
今は失業保険受給中であり、掛金を捻出するのは正直なところ難しい。それでも、未来の安心のために少しずつでも始める準備が必要だという思いが日に日に強まっている。
自分の将来を守るのは自分だ。iDeCoが人生の大切な選択肢であることは間違いないと思っている。多くの人に自助の必要性を伝えたい。これを読んでいるあなたも不安を抱えているなら、私と一緒に備えませんか。iDeCoで。
