暗号資産ETFの可能性も視野に
税制改正要望と同時期に金融庁では2025事務年度金融行政方針を発表しているが、これによれば、暗号資産に関する取り組みとして以下の施策を推進するとしている。
1. 国内外の投資家から投資対象と位置づけられている状況を踏まえ、イノベーション促進の観点にも留意しながら、利用者保護を図るための必要な制度整備を検討する
2. 取引に関する税務当局への報告体制の整備を前提とし、分離課税の導入を含めた税制面の見直しを検討する
3. 利用者が安全に暗号資産取引を行える環境を整備する観点から、暗号資産交換業者等へのモニタリングや無登録業者への対応に適切に取り組む
これらの施策は、暗号資産の投資対象としての位置付けへの現状を鑑みつつ、適切な規制とモニタリングを通じて健全な市場発展を目指す姿勢を示している。
なお、税制改正要望では、暗号資産ETF(上場投資信託)についても言及している。具体的には世界各国の動向を踏まえ、日本でも暗号資産ETFの組成を可能とするため、税制面を含め検討を行う必要があるとしている。
米国では2024年1月にビットコインの現物に連動を目指すETFが承認されている。既に個人投資家だけでなく、年金基金などの大口機関投資家もポートフォリオに組み入れつつある。
今後日本においても暗号資産ETFが組成されれば、機関投資家の参入が促進され、市場の活性化につながる可能性があるだろう。
求められる投資家保護と健全な市場発展の両立
暗号資産市場の健全な発展には、投資家保護と市場育成のバランスが欠かせない。金融庁の今回の税制改正要望と金融行政方針はこのバランスを意識したものとみられる。
分離課税の導入によって投資家の税負担が軽減されれば、暗号資産投資の機運が高まる可能性がある。同時に、適切な規制とモニタリングを通じて市場の信頼性を高めることは必須であり、投資家のリテラシーの啓蒙も欠かせない。
暗号資産を含むデジタル金融の世界は技術革新のスピードが速い。動き出した暗号資産市場の環境整備には適切な規制と健全な市場育成のバランスが不可欠だ。
