また話し合いをすることに
その夜、祐太が塾から帰ってきたのは、午後8時半を少し過ぎたころだった。
「おかえり、祐太。今日、ご飯のあとで少し話せる?」
夕飯を温め直しながらそう声をかけると、祐太は少し驚いたように眉を動かしたが、「うん」と素直にうなずいた。
食事のあと、2人でソファに並んで座った。テレビも消えたリビングには、ただ静かな空間だけが流れている。こんなふうに話すのは、どれくらいぶりだろう。
「あのね……最近、祐太がお友だちにいろいろ買ってあげてるって話、聞いたの。それって本当?」
できるだけ穏やかに切り出すと、祐太はちょっと目を泳がせたあと、小さく「うん」とうなずいた。
「どうして買ってあげることになったの?」
「……最初はチャージ切れで困ってる子がいたから代わりに払った。そしたら、ものすごい感謝されて、僕悪いことだなんて思わなくて……」
「わかってるよ。祐太は優しいから、みんなを喜ばせたいと思ったんだよね」
「うん……」
「でもね、お金って慎重に使わないと危険なものなの。特に自分以外の誰かのために使うときは……」
彩香は言葉を選びながら続けた。
「例えば、お菓子を買ってあげて、お友だちが喜んだとしても、それが続くと“もらって当たり前”になることもあるし、それが原因で関係が変わっちゃうこともあるの。お金には、そういう力があるんだよ」
祐太は黙って彩香の話を聞いていた。反発も言い訳もせず、ただ真剣な眼差しでこちらを見つめ返してくる。彩香は続けて話した。