iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)に関して、金融機関の窓口では顧客にどのような説明がなされているのか。iDeCo をはじめ確定拠出年金の制度に詳しいFPのグループ「FP相談ねっと」がその実態を全国の金融機関を対象に覆面調査したところ、金融機関によってiDeCoの知識・理解に格差があることが分かったという。「FP相談ねっと」代表の山中伸枝氏に話を伺った。
山中 伸枝 氏(「FP相談ねっと」代表)
調査を行った動機は? 具体的な採点評価基準は?
2019年7月から「金融機関等の営業職員における運営管理機関業務の兼務規制の緩和について」が施行され、金融商品の販売等を行う金融機関の窓口において、営業職員が確定拠出年金の運用の方法を説明することが可能となった。
つまり今回の規制緩和によって金融機関の窓口で運用商品の提示や情報提供など、iDeCoに関する詳しい説明を対面で受けられるようになったわけだ。これからiDeCoの加入を検討している人にとって朗報ではあるものの、実際のところ金融機関はどのような説明を行っているのか。その内容・様子を知りたい――。これが、FP相談ねっとが金融機関窓口の覆面調査を実施するにいたった動機だという。
「『身近な金融機関でiDeCoの説明が受けられるようになれば、より多くのお客さまがiDeCoのメリットを享受できるようになるはず』という想いが、今回の調査の主な目的ではありました。同時に、そもそも担当者がiDeCoに関する適切な情報提供を行っているのか、金融機関や担当者によって違いはあるのか。確定拠出年金(iDeCoや企業型確定拠出年金全般)の相談業務を取り扱うFPとしては、実態を把握しておきたいとも思ったのです」と山中氏は話す。
ただ、調査の際に金融機関を評価するといっても、偏った判断にならないように、「一定の基準」を定めておく必要がある。
そこで、FP相談ねっとに所属するFPは打ち合わせを繰り返して10個の採点評価基準を決め、覆面調査に臨んで採点を行った。
「あらかじめ想定問答集も作成して調査しました。金融機関に出向いた後はその都度報告し合い、進捗状況を確認しながら慎重に調査を進めていきました」(山中氏)。
覆面調査の結果で分かった「iDeCoリテラシー」の金融機関による格差
覆面調査を終え、結果をレポートにまとめてみて山中氏が特に感じたのが、「金融機関または担当者によってiDeCoのリテラシーに格差がある」ことだ。
「制度の仕組みなど基本的なレベルで差があると感じました。運用商品や手数料、税金など、伝えるべきことが伝えられておらず、顧客からヒアリングができていないところもいくつかありました」。
中には、「信託報酬は毎月変わります」といった誤答をしたり、「専業主婦にはiDeCoに加入するメリットはない」とスッパリ回答した担当者がいたりもしたという。
「ただ、これは確定拠出年金に詳しいFPが聞いているから間違っていることを即座に判断できるわけですが、一般の人だと何が間違っているのかさえも分からないまま説明を鵜呑みにしてしまいかねません。私たちはこのような事態が起きないよう、今後も警鐘を鳴らしていくべきと決意を新たにしました」(山中氏)。