「お疲れさまです!」
パートとして勤めているスーパーのバックヤードに入った沙織はエプロンを外し、すれ違った店長にあいさつをする。ロッカールームへ入り、手早く着替える。
「今日もこれから?」
そう声をかけてきたのは同じパート仲間の宮下だった。
「ええ、まあ」
「大変ねぇ。預けたりできないの?」
「そうなんですけど、あんまり乗り気じゃないみたいで」
言いながら、沙織は思わずため息を吐く。
「私の知り合い、通い介護で疲れ切って参っちゃった人とかもいるから、無理しないでね」
「うん、ありがとう」
宮下との話もそこそこに切り上げ、沙織はバックヤードから通用口に抜け、休憩時間に買った食材や日用品の入ったビニール袋を自転車のかごに入れる。またがった自転車のペダルを踏みしめて、自宅マンションとは反対方向へとこぎ出す。秋の空気をはらんだ涼やかな風が、疲れた沙織の背中を前へ前へと進ませた。