<前編のあらすじ>
副島愛美(37歳)は、共働きで2人の子供を育てている。長男の優斗が病弱で、よく発熱することでたびたび会社を休まなければならなかった。そのため、愛美は社内で「子持ち様」と言われ、徐々に立場を失くしていく。
会社の重要な日に休まざるを得なくなり、いよいよ追い詰められた愛美は、とうとう会社のルールを破ってしまい、いよいよ会社に居づらくなってしまった。これ以上、仕事を続けられないと思った愛美は……。
●前編:「無断欠勤とは何事か!」円満両立めざす“子持ち様”が同僚の策略で陥った、まさかの“地獄”
もう限界…ついに辞職を決断した時、想定外の提案が!?
愛美は、その日、隆弘に会社を辞めることになるかもしれないと相談した。優斗の状態がすぐに変わることはないだろうから、いったんは退職し、その後、優斗の身体がしっかりしてから、改めて仕事を始めるようにしたいと話した。それまでは、在宅でできる仕事を探してみようと思っていた。収入は減るが、その分はNISAに積み立てている資金を一時的にストップすることにした。隆弘も愛美との日々の話から、毎月のように欠勤しなければならないことが愛美に相当のプレッシャーになっていることがわかっていたので、愛美の判断を受け入れた。
週明けの始業前に工場長の稲山と会議室に入った時まで、愛美は会社を辞めることを考えていた。ところが、稲山は愛美と向き合ったとたんに「これは、相談なのだけど、今の部署を一時的に移って、新人の研修担当をしてもらえないだろうか?」と言い出した。戸惑う愛美に、「今度、第2工場を作ることになっているのだが、そこで20人を新規に採用する。その新人に、ミシンの使い方を1から教えてほしい。これは、信頼のおける人でないと頼めない。副島さんにぜひ担当してほしい」と真剣な表情で続けた。
愛美が「無断欠勤のため、何らかのペナルティを受けるのでは?」と問うと、稲山は、「お子さんのことは良く理解しているつもりだ。研修担当の部署であれば突然の休みということになっても困るようなことは少ない。もっとも、この仕事はずっと長くやってもらう仕事ではないが、とりあえず、向こう1年間、新人が十分に独り立ちできるまで研修から業務スタート後のサポートまでを引き受けてほしいんだ。1年たって、お子さんの状態が変わらないようであれば、その時点で改めて相談しよう」と言う。