破綻寸前だった円谷プロが成長 海外使用権の勝訴でグローバル化が加速
円谷フィールズのメイン事業は遊技機の販売ですが、投資家の期待はコンテンツビジネスに向けられているとみられます。
円谷フィールズの事業は2つあります。遊技機の販売を手掛けるPS事業と、知的財産を活用したライセンスビジネスおよび映像制作を手掛けるコンテンツ&デジタル事業です。
コンテンツ&デジタル事業の売り上げは全体から見ると大きくありません。しかし営業利益では全体の4割を占めており、重要な収益源となっています。
【セグメント業績(2023年3月期)】
売上高 | 営業利益 | |
PS | 1008億円 | 77.1億円 |
コンテンツ&デジタル | 145億円 | 43.8億円 |
その他 | 23億円 | 0.8億円 |
(参考)連結 | 1171億円 | 109.5億円 |
コンテンツ&デジタル事業の中核子会社が円谷プロダクションです。
コンテンツ&デジタル事業は主に円谷プロダクションとデジタル・フロンティアで構成されています。デジタル・フロンティアの営業利益はセグメント全体の1割程度であることから、利益の大半は円谷プロダクションが稼いでいるとみられます。
【コンテンツ&デジタル事業の業績の内訳(2023年3月期)】
事業収入/売上高 | 営業利益 | |
円谷プロダクション | 102億円 | ― |
デジタル・フロンティア | 41億円 | 4.1億円 |
(参考)セグメント全体 | 145億円 | 43.8億円 |
※円谷プロダクションは事業収入、デジタル・フロンティアとセグメント全体は売上高
円谷プロダクションは「ウルトラマン」などの知的財産を所有する企業です。かつては赤字体質から経営危機に陥っていました。2007年には映像コンテンツを制作していたティー・ワイ・オー(現・KANAMEL)に買収されてしまいます。
円谷フィールズ(当時はフィールズ)の子会社となったのは2010年のことです。円谷プロダクションは2014年度に債務超過を解消し経営再建を果たしました。
現在では円谷プロダクションは円谷フィールズの中核的な存在となっています。「ウルトラマン」などの知的財産は海外でも知られており、特に2019年度に本格参入した中国で人気です。買収した円谷フィールズも、2022年に社名を現在のものへと変更しました。
【円谷プロダクションの事業収入(2023年3月期)】
・国内MD・ライセンス:18億円
・海外MD・ライセンス:61億円
・映像事業:23億円
※MD(マーチャンダイジング)=商品化
※海外MD・ライセンスのうち中国:55億円
円谷プロダクションは2018年、「ウルトラマン」の海外利用権で争っていた米国の訴訟で勝利しました。2020年に勝訴が確定したことから、現在は北米地域への進出を強化しています。
円谷フィールズによれば、米国のコンテンツ市場規模は2020年で49.6兆円です。これは日本(同12.0兆円)や中国(同20.7兆円)の数倍に上ります(出所:円谷フィールズ グループ成長戦略 コンテンツ&デジタル事業領域)。北米への進出が成功すれば、円谷プロダクションはさらに大きな収益を得られるかもしれません。