成績が振るわない中で資金が流入
「債券パワード・インカムファンド(資産成長型)」(愛称:パワード・インカム。以下同)は、2021年2月に設定された比較的新しいファンドです。設定来リターンは芳しくありませんが、最近になって資金が集まりだし、2023年3月に純資産総額が初めて600億円に到達しました。
【債券パワード・インカムファンド(資産成長型)】
好調とは言えないパワード・インカムは、なぜ投資家に選ばれているのでしょうか。
利上げ停止を見越して買いが集まる
パワード・インカムは、アメリカの利上げ停止を予想する投資家の受け皿となり、資金が集まっていると考えられます。
アメリカは新型コロナウイルスの拡大を受け政策金利をゼロとしていましたが、2022年3月から利上げを開始しました。パワード・インカムは実質的にアメリカの債券に投資しますが、債券は金利が上昇すると一般に価格が下がるため、利上げ局面で債券型ファンドはあまり選好されません。パワード・インカムも、純資産総額を減らす状況が続いていました。
しかし、2022年後半から2023年にかけてパワード・インカムに資金が集まりだします。アメリカの政策金利は2023年2月までに4.50~4.75%へ引き上げられており、市場では利上げの停止が意識されるようになりました。金利の上昇が止まれば債券の下落圧力の低下にも期待できることから、パワード・インカムにも資金が流入したと考えられます。
【純資産総額の増減額】
目標利回り10%も魅力
高い利回りが期待できる点も、パワード・インカムが選ばれている理由の1つでしょう。
パワード・インカムは、基本的に「米国債」「ジニーメイ債(※)」「米投資適格社債」「米ハイイールド社債」に投資し、年率10%程度のインカム収入を目指します。2023年2月時点では、9.2%の利回りを確保しました。
※ジニーメイ債:ジニーメイ(米国政府抵当金庫)が保証する米国住宅ローン担保証券
【ポートフォリオ特性(2023年2月末時点)】
・利回り:9.2%
・平均格付け:BBB-
アメリカの金利が上昇しているからといって、10%もの利回りは簡単には実現できません。そこでパワード・インカムは、各資産に50~250%、全体では200~500%レバレッジをかけて投資します。レバレッジをかけることで実質的な運用額が大きくなり、投資額に対する利回りが向上することになります。
【投資資産比率(2023年2月末時点)】
比率 | |
米国債 | 50% |
ジニーメイ債 | 50% |
米投資適格社債 | 50% |
米ハイイールド社債 | 241% |
合計 | 391% |
ただし、レバレッジをかけるとインカム収入の向上には期待できますが、債券価格の変動の影響もより大きくなります。パワード・インカムもこれまでインカム収入を積み上げてきましたが、金利上昇による債券価格下落によって打ち消され、設定来リターンはマイナスに陥りました(2023年2月末時点)。