8年前の12月18日、東京地裁はAIJ投資顧問の元社長ら3人に実刑判決を下します。詐欺と金融商品取引法違反で、企業年金約1500億円が失われた事件です。元社長らは控訴しましたが、2016年4月12日に上告が棄却され刑が確定しました。
大切な年金が失われた事件の内容と、私たちを支える年金制度について整理しましょう。
年金基金1500億円の大部分が消失
AIJ投資顧問は企業年金の1つ「厚生年金基金」の運用を請け負っていました。基金の多くが運用難から将来の年金支給のために必要な額が不足する「積み立て不足」に陥っていたところ、AIJ投資顧問が最大240%の利回りという虚偽の運用実績をアピールし不正に資金を集めたものです。
実際にはAIJ投資顧問の運用はうまくいっておらず、2012年1月下旬に行われた証券取引等監視委員会による調査により、基金から預かった資産1458億円の大部分が失われていることが判明しました。証券取引等監視委員会は同年7月、AIJ投資顧問を東京地方検察庁に告発します。
この事件を契機に、国は2014年より厚生年金基金を継続できる基準を引き上げ、多くの基金は解散か別の企業年金へ移行しました。厚生年金基金は、実質的に廃止されたといえるでしょう。