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【プロが解説】ピンチはチャンス⁉ トランプ関税を契機にグローバル市場で飛躍する、「したたかな」経営力のある企業に注目

原嶋亮介
原嶋亮介
コモンズ投信運用部シニア・アナリスト/ESGリーダー
2025.09.01
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【プロが解説】ピンチはチャンス⁉ トランプ関税を契機にグローバル市場で飛躍する、「したたかな」経営力のある企業に注目

日本の新しい国づくりに向け“変化を始めた企業”、“変化にチャレンジする企業”を中心に、中長期的な視点で厳選した国内株式を主な投資対象とする、コモンズ投信のアクティブファンド「ザ・2020ビジョン」。その月次レポートから、アナリストによるコラムをご紹介します。
※本稿は「ザ・2020ビジョン」月次レポート(作成基準日 2025年 7月31日日)内『未来予想図』を転載・再編集したものです。

トランプ関税をチャンスに変える日本ブランド

米国トランプ大統領の関税政策に世界中の国々が振り回されています。
日本も、赤沢経済再生担当相が何度も訪米して交渉にあたった結果、15%という税率で決着したわけですが、この関税が日本企業にどのような影響を及ぼすか、というのは皆さんもご関心の高いところかと思います。
自動車産業を始めとして事業にネガティブな影響を懸念しなければいけない業界もあるのは確かですが、一方で、これを競争上の機会(チャンス)にできる企業もあるだろうと考えています。

まず、今回の関税を考える上で考えなければならないのは、サプライチェーンの構造です。日本企業といえども、米国内で原材料を調達し、現地の工場で生産をし、米国内に販売している場合、米国内のインフレによる消費減退というマイナス要素はあるかもしれませんが、基本的に関税の直接的な影響は受けません。また、日本企業と言っても、必ずしも日本から米国に輸出をしているわけではなく、中国から輸出している場合もあれば、ベトナム、タイ、インドネシアなどから輸出している場合もあるので、グローバルにサプライチェーンがどうなっているかを確認することは不可欠です。

また、そのサプライチェーンが同業他社との比較でどう違うのか、そして、それぞれの生産国に対する関税がどうなっているのか、も非常に重要なポイントになります。極めて単純化したケースを想定すると、ある日本企業が米国市場向けの製品を米国内で生産しているとして、米国の競合を含む同業他社が全く米国生産を行っていないような場合、この日本企業は米国企業よりも今回の関税の恩恵を受けられるような構図もあり得ますので、企業の「国籍」ではなく、あくまでも「生産国」に注目すべきと考えます。

また、この関税は、直接は関係のない米国外の市場での競争環境にも変化を与える可能性があると考えていますので、米国以外でのグローバルな事業展開の状況も確認しなければならないと思っています。少し前に、某日用品メーカーとの取材の中で、「中東におけるシェアが上昇している」という話を聞きました。それはなぜか、というと、イスラエルによるパレスチナ侵攻によって、イスラエルを支援する米国に対するイメージが悪化して米国ブランドがシェアを落とし、その代わりに消費者が日本ブランドを選好するようになった、ということです。

私は、これと同じような事象が、今後、世界各地で起こるような気がしています。
例えば、米国との交渉において50%の関税を課せられることとなった(その後、延期と一部品目の除外が発表されていますが)ブラジルにおいて、米国ブランド/メーカーはこれまでと同じようなビジネスを展開することができるでしょうか? 身近なところでいえば、日本でも、自動車に対する関税がフォーカスされており、米国からは日本で米国車が売れないことを批判する声が出ていますが、この関税交渉の経緯を踏まえて、「仕方ない、それならアメ車を買おうか」と思う日本人がどれだけいるでしょうか? むしろ、苦境に陥っている日本の自動車メーカーを助けなければ、という感情を抱いて積極的に日本車を選好する人の方が多いのではと思いますし、人によっては米国そのものに対するイメージが悪化しているというケースもあるでしょう。程度の差こそあれ高関税を課されることとなる(なりそうな)インドや東南アジア諸国でも同様だとすると、そこは日本ブランド/メーカーにとって大きなチャンスであり、まさに「攻めどき」であると言えるかもしれません。

以上をまとめると、「トランプ関税をチャンスに変える」ためには、下記のような条件がありそうです。

①米国市場において、サプライチェーンの構造上、競合対比で極端な高関税がかからないこと(米国市場で不利な競争条件になってしまうと、その他の地域が有利になっても打ち消ししてしまう可能性)
②日本・米国以外の国・地域でも一定程度、社名・ブランドが認知されている
こと(ゼロから進出しますというのでは流石に勝負にならないことも想定されるため)
③業界内に、強力な米国競合企業がいること(米国を代表するブランド/企業というイメージが強ければ強いほどチャンスになるかも!?)
④その米国競合企業の商品との比較で、機能面、デザイン面などでの大きな格差がないこと(日本ブランドに乗り換えてもそこまで大きな不満・不便・不快を感じない、代替性があるというのは大前提)

こうした条件も意識しながら、今回のトランプ関税を契機にグローバル市場で大きく飛躍しようという、「したたかな」経営力のある企業に注目していきたいと考えています。

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著者情報

原嶋亮介
コモンズ投信運用部シニア・アナリスト/ESGリーダー
ブリヂストン、日東電工、ジャパン・リート・アドバイザーズ(J-REITのユナイテッド・アーバン投資法人の資産運用会社)の3社にて、主に経理・財務・IRに従事。2019年2月、コモンズ投信入社。
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