finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】「衆参とも少数与党」で通る法案は? 野党の「金融所得課税」に自民の「NISA拡充」でバランス取りも

文月つむぎ
文月つむぎ
2025.07.24
会員限定
【文月つむぎ】「衆参とも少数与党」で通る法案は? 野党の「金融所得課税」に自民の「NISA拡充」でバランス取りも

NISA・iDeCo改革や暗号資産ETFは、野党も異議なし?

7月20日の国政選挙により、衆議院・参議院ともに少数与党が確定し、日本の政治は大きな転換点を迎えた。新たに「グローバルvs反グローバル」といった対立軸が現れるなど価値観が多様化する中、社会の階層化や分断が進むとともに、企業や団体という組織ぐるみで特定の政党を支持するという時代が終焉に近づき、個々人がネット情報等を参考にして、自らの考えに近く、自らの利益に資する政党を支持するという動きが強まった。その結果、さまざまな政党に支持が分散し、欧州のように比較的大きな政党と複数の中小規模政党が併存する多党制の時代を本格的に迎えたように思われる。

6月までの通常国会においては、政府が政策ごとに(異なる)野党の案を鵜吞みにして国会審議を通過させる場面が散見され、少数与党の力の無さが露呈した。田中角栄は「政治は数であり、数は力、力は金だ」と言った。「力は金だ」はもはや世間が受け付けないが、政治を動かすには「数」が必要なのは今も不変であることを思い知らしめた。

一方の野党においては、一致団結して政権交代を図るという動きは乏しく、政権運営責任をあまり負うことなく、少数与党が提示する政策に是々非々で対応し、自党の政策を最大限受け入れさせる戦略を引き続きとるように見える。

参院選で躍進した政党が掲げる公約の多くは足元の課題解決を目指しており、必要財源は主に国債発行で賄い、将来期待される税収増で借金を返済していくといった類であり、期待先行の感がある。より現実的に、国民の負担が当面増す耳の痛い政策ではあるが、将来の安心・安全な国家作りのために必要不可欠な骨太の政策を論じるといった姿勢があまり見られないのは残念だ。加えて、野党間で政策の中身が微妙に異なっており、意見集約の動きも見られないとなると、今後、何も決められない国会となる恐れがある。筆者としては、中長期的な政策遂行には、やはり与野党で連立を組んで少数与党を脱するのが最善策だと思う。与党とともに真に政権運営責任を負う覚悟と実力のある野党が現れることを切に望む次第だ。

 

こうした中、気になるのは、今の政府・与党が唱える政策が順調に進むのかどうかだろう。例えば、資産運用業界においては、政府の骨太の方針に掲げられた、「NISAの利便性向上(対象年齢の見直し、対象商品の拡大)」、「企業型DC・iDeCoの運用改善や拠出限度額の引き上げ」、「金融資産やキャッシュフローの状況を容易に把握できる環境の整備」のほか、自民党の金融調査会等が提言した「暗号資産の業法変更(金融商品と位置づけ、税制・規制の両輪で環境整備を実施)」等の議論の進展度合いだ。

各党の公約を見る限り、これらの政策に異議を唱える党は見受けられず、審議はスムーズに進むものと思われる。中でも国民民主党は、今回の参院選の公約として、「低中所得者の老後の資産形成を支援する『個人年金積立金拠出制度』の特例検討」を掲げ、「本人(上限月間1万円・年間12万円)が拠出すれば国が同額を拠出することを検討する」と、より踏み込んだ政策を掲げるなど、個人の資産形成支援に前向きの姿勢を鮮明にしている。また、同党は「暗号資産を活用したトークン・エコノミーの支援」として、暗号資産に関する税制と規約の見直しや20%の申告分離課税、損失控除(3年間)の適用、レバレッジ倍率の引き上げ(2倍から10倍へ)、暗号資産ETFの導入等を掲げている。内容は政府・与党案と整合しており、これらの施策は実現する可能性が高い。
 

「与党と野党のバーター」という新たな政策力学

別途、筆者が注目するのは、昨年秋の衆院選の公約において、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党が揃って金融所得課税強化を唱えていることだ。特に立憲民主党と日本維新の会は税率引き上げに留まらず、総合課税化までも展望しており、より踏み込んだものとなっている。世界的に富裕層への課税強化が進められる中、我が国においても「1億円の壁」に代表されるように、「高所得層の税負担が相対的に低い要因となっている一律低率(20%)の金融所得課税を引き上げ、高所得層と一般の納税者の間の税負担をより公平にすべきだ」との声が高まっている。この案は過去にも政府内で俎上に載ったことがあったが、そのたびに株式市場の急落を招き、本格的な議論を断念してきた経緯がある。

近年、資産形成を促すNISAやiDeCoといった非課税制度が拡充される中、金融所得課税の強化は、その制度の限度額内に金融資産が収まる資産形成層(現役が多い)には影響がなく、限度額以上に金融資産を持つ、あるいは非課税制度を利用していない(できない)富裕層や高齢者の税負担を増やすことになる。また、長期積立投資を促すNISA制度が浸透・定着するにつれ、資産形成層の間では、一時的な株式市場の急落を冷静に受け止める、あるいは投資の好機と捉える投資家が増えてきている。今回の参院選では、現役(資産形成層)の支持を伸ばした国民民主党や参政党が大きく議席数を増やしており、筆者は、こうした政党においては、株価急落リスクを恐れて政策提言を控える動きが限定的になるのではないかと見ている。

なお、自民党の資産運用立国議員連盟が提言するプラチナNISA(高齢者に限定した対象商品の拡大やスイッチングの解禁)は高齢者のNISA利用を促す策であり、こうしたNISA拡充策とセットにして、金融所得課税の痛みを和らげるという手法をとってくることも考えられる。ちなみに、追加対象の商品として毎月分配型投資信託が噂されているが、金利ある世界が戻ってきていることより、日本国債の安定消化も兼ねて、公社債投信をNISA対象に加えることも考えてほしいところだ。
 

「パンとサーカス」の政策ばかりが先行すると、財政拡大懸念による日本売り(円安、株安、債券安)が本格化する可能性がある。選挙前より超長期国債の利回りが上昇してきているのは読者の皆様もご承知のことと思う。だが、金融所得課税強化だけでは、その動きを止めることは不可能だ。所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税、酒・たばこ税、自動車税等といった税に加え、年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料等の社会保険料を総合的に分析するほか、(日銀を含む)政府が保有する金融資産の有効活用も論点に加えて、最適解を見つける努力が求められる。

本来、政府が渇きを訴える人々に行うべきは、一過性のペットボトルの水(パンとサーカス)を与えることよりも、水源を整備し、井戸を掘ること(本源的な問題解決を図る施策)ではないか。日本が「国難」の状況にあるというのであれば、なおのこと、大局的・総合的な政策を議論すべきだろう。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #金融庁
前の記事
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
2025.06.27
次の記事
【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは
2025.08.05

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

金利ある世界で、金融機関は何を支えるのか――資産運用立国の提言と国会質疑から見える「全体設計」への転換

2026.06.17

NISAの次に問われる本丸--企業型DC・iDeCo、個人向け国債、そして資産形成助言の再設計

2026.05.28

データが映すインデックス時代のアクティブ再考ーー「安さ」だけでは、人は持ち続けない

2026.04.24

金融経済教育が定着しない本当の理由――後回しにされないための「行動に繋がる接触設計」を考える

2026.04.16

こどもNISAと「NISA貧乏」――「投資枠」ではなく「初動率」をいかに上げるか

2026.04.03

「働けば報われる」のその先へ―― 給付付き税額控除と寄附制度が開く「資本循環国家」への道

2026.02.18

プルデンシャル生命の組織に潜む歪み――彼らは「月のウサギ」を見上げなかったのか

2026.02.12

目先の配当か、未来の土壌か――国家を再設計するという選択

2026.02.04

中道改革連合「ジャパン・ファンド構想」の見過ごせないリスクと、実現に向けた論点

2026.01.29

家計・企業・国家のリスクテイクを支える “国債消化策の基礎工事”を真剣に考える

2026.01.14

おすすめの記事

常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップに再浮上、「リスクオン」でバランスファンドより株式ファンドに軸足

finasee Pro 編集部

仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?

岡本 修

SBI証券で「半導体」に強気、日米の半導体インデックスファンドが売れ筋ランクアップ

finasee Pro 編集部

福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退

finasee Pro 編集部

マン・グループの洞察シリーズ⑱
AIとソフトウェアセクターが揺るがすプライベート・クレジット市場 : 真の投資機会を見極めるために

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
常陽銀行の売れ筋で「日経225ノーロード」がトップに再浮上、「リスクオン」でバランスファンドより株式ファンドに軸足
SBI証券で「半導体」に強気、日米の半導体インデックスファンドが売れ筋ランクアップ
仕組商品のリスクは「複雑かつ複合的」なのか?
中国銀行で一極集中型の「パワーテクノロジー株式」「世界半導体関連フォーカス」が人気化
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
野村證券の人気ファンドは「半導体」「IoT」「宇宙開発」など社会変革を担うテクノロジーに集中
金利ある世界で、金融機関は何を支えるのか――資産運用立国の提言と国会質疑から見える「全体設計」への転換
資金流入額が回復、「国策に売りなし」で国内AI、半導体、防衛などのファンドが人気=26年5月投信概況
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「支店長! 接客について、先輩方のように自信が持てません。どうしたら自信が持てるようになりますか」
「体制」から「態勢」へ、改正保険業法に見る金融庁の着眼点の変化
福岡銀行で「半導体」人気が爆発、「日本株」や「純金」の人気は後退
米国経済 Deep Insight 第17回
AIブームを支えるデータセンター建設、その拡大は続くのか
SBI証券で「半導体」に強気、日米の半導体インデックスファンドが売れ筋ランクアップ
中国銀行で一極集中型の「パワーテクノロジー株式」「世界半導体関連フォーカス」が人気化
みずほ銀行で「IGO」が主力に、トップ10の入れ替え4本で次の展開待ち
マン・グループの洞察シリーズ⑱
AIとソフトウェアセクターが揺るがすプライベート・クレジット市場 : 真の投資機会を見極めるために
ナスダック連動ETF「インベスコQQQ」が上場、巨大運用会社が国内市場で狙う「次の一手」とは?
NISAの次に問われる本丸--企業型DC・iDeCo、個人向け国債、そして資産形成助言の再設計
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第19回:デジタル化の否応なしの進展が中核市の人口流出を加速させる?
2026年3月期の地銀・第二地銀「預り資産取扱い動向」を読み解く
「オルカン」「S&P500」「世界のベスト」に続くファンドは? 「スペースX」への関心で購入停止ファンドも=資金流入額上位20ファンド
顧客利益の最善を追求し、人生の質を高めることが IFA業界の発展と社会貢献につながる
インデックス投資から始めた顧客を「思考する投資家」へ導くために ――対面営業を主体とする投信販売会社・本部投信担当者に求められる視点――
信託ならではの専門性をオンラインで実現 独自のハイブリッド型チャネル戦略を推進 case of 三井住友信託銀行
SBI証券の売れ筋で「WCM」がランクイン、「FANG+」を押しのけて高い順位に進んだ理由は?
ファンドアナリスト篠田 尚子が2026年第1四半期を振り返る~投資信託の今と、これから
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【バランスファンド編】
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら