finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
【動画】連続講義「米国金融機関定点ウォッチ」

巨大金融グループだからこそ可能なプライベートバンキングサービスとは?
シティグループから学ぶ、「法人部門とのシナジー」「職域への展開」という戦略【動画付き】

沼田 優子
沼田 優子
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 専任教授
2025.02.05
会員限定
巨大金融グループだからこそ可能なプライベートバンキングサービスとは?<br />シティグループから学ぶ、「法人部門とのシナジー」「職域への展開」という戦略【動画付き】

シティグループのプライベートバンクは、金融業界における革新と伝統が見事に融合した存在です。長い歴史を持ちながらもグローバル展開を加速し、富裕層や超富裕層向けに精緻なサービスを提供しています。今回は、シティの特徴的なプライベートバンキングの成り立ちから、他のプライベートバンクとの違い、そして注目すべき職域サービスを紹介します。

動画

 

ダイジェスト

――シティというと、「全世界に支店網を誇る巨大銀行」というイメージがあります。同グループのプライベートバンクとは、どのようなものなのでしょうか。

シティのプライベートバンクは老舗ですので、少し歴史をご紹介させていただきます。
シティは1812年に創業し、200年以上の伝統があります。1820年には、すでに信託サービスや相続サービスを提供していました。実はシティの創業以来、プライベートバンキング的なサービスが同社の核心的なビジネスだったと言えるでしょう。

シティは1865年に商業銀行業務を開始しています。1897年には外国為替に進出し、その後のグローバル展開への素地を築きました。1915年には欧州にも進出し、グローバル化しました。1935年には運用にも進出しています。

プライベートバンキングは、さまざまなサービスを総合的に提供するサービスですが、同社における歴史も非常に長いものです。
ただし、現在の形になったのは1986年にプライベートバンキンググループが設立されてからです。2021年にはグローバルウェルスマネジメント部門に組み込まれています。

 

――他のプライベートバンクとの違いは。

プライベートバンクは大規模化しにくいビジネスだと思います。「知る人ぞ知る」という部分が重要で、富裕層や超富裕層に向けた密接なサービスを提供するため、お客様との距離も非常に近いです。そのため、グローバル展開や大規模展開は難しい面があります。

米国には老舗のプライベートバンクが多いなか、シティは金融コングロマリットを目指し、グローバル展開を積極的に行っている点が特徴です。


現在、シティのプライベートバンキング部門は「パーソナルバンキング&ウェルスマネジメント」という部門の中にあります。
その収益レベルを見てみると、グローバルウェルスマネジメントは全体の3割を占めており、かなり大きな比率を占めています。

特に注目すべきは、シティのグローバル展開です。北米部門が半分を占める一方で、アジアの比率が3割というのは珍しいことです。

また、顧客セグメントを見ると、伝統ある老舗のシティならではの特徴として、プライベートバンクは超富裕層の比率が非常に高く、4割を占めています。
そのほか、富裕層や予備軍を含めた比率は、半分を超えています。


さらに注目すべきは、「職域」分野です。プライベートバンクで職域サービスを提供するのは非常に珍しいことですが、シティはここに注力しており、後ほど詳しくお話しさせていただきます。

最後に、商品のバランスを見ていただくと、バンキング、貸付、運用がそれぞれ3割ずつを占めており、非常にバランスが取れたポートフォリオになっています。
残りはカストディや信託サービスなどです。

 

――グループ内におけるプライベートバンクのシナジーについて教えていただけますか。

プライベートバンクは大規模化しにくいビジネスですが、シティのように金融コングロマリットを目指す金融機関では、他部門との連携が非常に活発で、それが強みになっています。パーソナルバンキングや貸付、ファイナンシャルプランニング部門に加えて、資本市場部門や運用部門、商業銀行部門、投資銀行部門との連携が行われていることが確認できます。このような連携は、規模の大きなコングロマリットでないとできません。

また、超・富裕層のような資産規模の大きいお客様は法人部門との連携が強化されており、富裕層や予備軍に対してはリテール部門との連携が行われています。
法人部門が提供する超富裕層向けのサービスに関しては、お客様の洗練度や金融リテラシーも非常に高いという特徴があります。


シナジーについて数値で詳しくご紹介すると、プライベートバンキング部門と法人部門との連携は、収益ベースで10億ドル以上の規模に達しています。リテールバンキングからの顧客紹介は5万人以上となっており、逆にプライベートバンキングから他の部門に紹介される顧客は730名程度です。また、プライベートバンキング部門から法人部門への紹介が行われていることも、シナジーの一環として重要です。

このように、お客様の金融洗練度のレベルが高いことが、このシナジーの強さを支えています。法人部門が提供するサービスはリスク許容度の高い商品になってくるからです。一方で、個人の超富裕層がそのレベルの金融洗練度があるとは限りません。ただ、そのような方は資産管理会社であるファミリーオフィスを持っており、そこに専門的なスタッフが備わっています。

 

――職域サービスについて詳しく教えていただけますか。

職域サービスは、プライベートバンキングにおいて非常に珍しい取り組みですが、シティグループでは成長戦略の一環と位置付けています。

シティの職域サービスは法律事務所に特化しており、そのマーケットシェアは4割を誇ります。1971年に設立された「法律事務所グループ」の以来の歴史があります。法律事務所は他の業界と比較して数が少なく、会社数としては1000、顧客数も5万人程度です。しかし、法律事務所に特化したサービスを提供する機関が他に少なく、法律事務所は株式未公開企業が多いこともあって、情報が出回っていません。

シティの職域サービスは法律事務所に特化することで、法律事務所業界の経営情報がシティに集まりやすくなります。弁護士事務所で働き始めたアソシエイトクラスはキャリアを積んでいき、やがて弁護士事務所の経営層という超富裕層になっていきます。このアソシエイトの人々に「職域」という形でサービスを展開することで、早い段階からプライベートバンクサービスに囲い込むことができます。


シティの職域サービスは現在のところ弁護士に特化していますが、同様の専門業務(プロフェッショナルサービス)を提供する他の業界にも展開を検討しています。
具体的には、資産運用業界、プライベートエクイティ業界、ベンチャーキャピタル業界などを考えているとのことです。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1

関連キーワード

  • #富裕層
  • #金融リテラシー
前の記事
営業担当者数で全米トップ!「一人店舗」で躍進する老舗証券エドワード・ジョーンズ【動画】
2024.11.05

この連載の記事一覧

【動画】連続講義「米国金融機関定点ウォッチ」

巨大金融グループだからこそ可能なプライベートバンキングサービスとは?
シティグループから学ぶ、「法人部門とのシナジー」「職域への展開」という戦略【動画付き】

2025.02.05

営業担当者数で全米トップ!「一人店舗」で躍進する老舗証券エドワード・ジョーンズ【動画】

2024.11.05

【動画】連続講義「米国金融機関定点ウォッチ」
 ウェルス・ファーゴ 銀行による証券業務のパイオニア

2024.01.18

【動画】連続講義「米国金融機関定点ウォッチ」
超富裕層向けサービスで卓越するゴールドマン・サックス

2023.12.15

【動画】連続講義「米国金融機関定点ウォッチ」
米大手証券メリル・リンチを買収したバンク・オブ・アメリカ

2023.11.10

おすすめの記事

ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋トップに新設の単位型ファンド、バランス型人気も続く

finasee Pro 編集部

【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔

文月つむぎ

第11回 投資信託選びの常識を疑え!(その3)
ターゲットイヤー・ファンドは万人向き?

篠原 滋

日本初のハンセンテック指数連動ETFが東証上場―注目浴びる“中国テック株”が投資の選択肢に

Finasee編集部

静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?

finasee Pro 編集部

著者情報

沼田 優子
ぬまた ゆうこ
明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科 専任教授
東京大学経済学部卒、一橋大学大学院国際企業戦略研究科博士後期課程修了、博士(経営)。野村総合研究所、NRI アメリカ、野村資本市場研究所、野村證券、明治大学国際日本学部、帝京平成大学を経て2023 年より現職。いちよし証券、日本航空電子工業社外取締役。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
第11回 投資信託選びの常識を疑え!(その3)
ターゲットイヤー・ファンドは万人向き?
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
金融庁が「プログレスレポート2024」の公表を休止した深いワケ 「FDレポート」との違いが出せなくなった?
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
資産形成を達成した後…「次なる課題」
福岡銀行で「225」人気が衰えた理由は? 「純金」、「USリート」と「世界半導体投資」が人気化
アクティブファンド復権!? 中国銀行で株式アクティブへの期待高まる。「ROBO」と「純金」の評価も向上
【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む
常陽銀行にみる株式ファンドへの逡巡、「相互関税」と「中東緊張」で様子見の中を上値に進むファンドは?
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
アクティブファンド復権!? 中国銀行で株式アクティブへの期待高まる。「ROBO」と「純金」の評価も向上
【連載】投信ビジネスのあしたはどっちだ
資産形成を達成した後…「次なる課題」
ターゲットは“デジタル富裕層”―SMBCグループとSBIグループの新会社設立により「Olive」に新たな“プレミアムクラス”
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
常陽銀行にみる株式ファンドへの逡巡、「相互関税」と「中東緊張」で様子見の中を上値に進むファンドは?
【金融風土記】宮崎県には地方創生の「優等生」も! 地域金融機関の集約が進む
福岡銀行で「225」人気が衰えた理由は? 「純金」、「USリート」と「世界半導体投資」が人気化
⑥経営者保証がもたらす問題点と解決策【動画つき】
「自立と連携」を掲げて試行錯誤を重ね、確立された「銀証連携」モデルが新時代を拓く case of しずおかフィナンシャルグループ
投信ビジネスに携わる金融のプロに聞く!「自分が買いたい」ファンド【アクティブファンド編】
【文月つむぎ】投信だけでなく保険販売でもFDを徹底できるか?知っておきたい「保険業法」改正のポイント
【文月つむぎ】「プラチナNISA」という言葉がない!自民党金融調査会の最新提言を読み解く
浪川攻の一刀両断
手数料自由化とファンドラップから見る日本と米国の証券リテール改革の相違
いわき信組の不正を見抜けなかった金融庁、「根本的な人員不足」も背景
「支店長! 一般職に投信のセールスをしろとおっしゃいますが、日常業務が忙しくてとても無理です!」
トランプ関税の混乱を横目に「戦略的自律」をめざす欧州企業に可能性、「テンバガー・ハンター・ヨーロッパ」の視点とは?
【文月つむぎ】伊藤豊氏が金融庁長官に就任へ 
知っておきたい新長官&3局長の横顔
三菱UFJMS証券の売れ筋にみえる国内株式ファンドへの期待、物価高で苦しむ年金生活者を支えるファンドとは?
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら