株価乱高下、「おおむね冷静に対応」
昨年の大会で、新NISAや金融経済教育推進機構(J-FLEC)などの新たな器に魂を入れ、「貯蓄から投資へ」の流れを正しく導いていくと宣言していた森田氏。「あれから1年、私達の長年の悲願でありました『貯蓄から投資へ』の流れは間違いなく動き始めたと確信している」と語りました。
その背景について、「政府の強いリーダーシップによって導入された新NISAがこうした動きの大きな起爆剤となったことはいうまでもない」と指摘。また、「日本のデフレからの脱却や、10年来のコーポレートガバナンス改革の成果なども後押しをした。日経平均株価はバブル期の高値を更新し、一時4万2000円を超える水準にまで到達した。8月上旬、株価は大幅な乱高下に見舞われたが、中長期的成長の視座に立ち、おおむね冷静な対応が図られたと感じている」と述べました。
そのうえで「私達の命題は、動き始めた『貯蓄から投資へ』の流れを一時的なブームに終わらせることなく、さらに大きなうねりにそして持続的なものにできるよう、業界をあげて取り組んでいくことだと考えている」と説明。「政府が打ち出している資産運用立国の実現に向けても、前向きな変化を追い風に、インベストメントチェーンを構成する各社による一体的な取り組みを推進していく」と決意を語りました。
家族サポート口座「センシティブだが避けて通れない」
今期注力するテーマとしては、(1)国民の資産形成支援の強化、(2)SDGsの達成に向けた取り組み、(3)金融資本市場の魅力向上に向けた取り組み、(4)スタートアップ育成の支援、(5)DXの促進、(6)高齢社会に対応した金融サービスの実現に向けて、(7)業界全体のレベルアップに向けた取り組み、(8)業界全体のミドルバックオフィス業務の効率化に向けた取り組み――の8つを挙げました。
このうち、(1)の資産形成支援強化については、「三つの柱」としてNISAのさらなる普及、J-FLECのサポートを通じた金融リテラシーの向上、iDeCoの拡充を掲げました。
また、(6)の高齢社会対応に関しては、「『家族サポート証券口座』(高齢世代の資産運用・管理や、次世代へその資産を検証するための代理人取引の仕組み)をぜひとも実現させたい」と強調。「この取り組みは皆さんお分かりの通り、大変センシティブなものだが、超高齢化社会になっている我が国において、避けては通れない重要な取り組みであることも事実なので、しっかり取り組んでいく」と述べました。
(7)の業界レベルアップについては、顧客の最善の利益にかなった商品提供がなされるよう、製販売全体として、プロダクトガバナンスの確保に向けた取り組みを推進するとしました。これについて森田会長は「『貯蓄から投資へ』という動きを健全で、サステナブルなものにしていくために、私達自身が更なるレベルアップを図らなければならない」と説明しました。
(8)の業務効率化に関しては、ミドルバックオフィス業務の従事者の確保が難しくなっている状況を踏まえ、「業界横断的に取り組むことが可能な業務もあるのではないか、コスト削減にも繋げることができるのではないかという観点で、チャレンジングな取り組みではあるものの、取り組んでいきたい」と述べました。