長官から金融機関へ要望 「顧客本位で販売後のフォローアップを」
金融庁の栗田長官は基調講演で、1月のNISA拡充の前後で利用者数が拡大傾向にある現状を踏まえ、「このように新たに資産形成に生み出す方々が増えている状況だからこそ今一度、国民の皆様が適切に制度をご活躍ご活用いただけるよう、官民連携して、わかりやすく丁寧に周知広報を行う必要がある」と語りました。
そのうえで、「金融機関の皆様におかれては、適切な顧客対応に取り組んでいただくことが必要であると考える。具体的には、利用者の方々が、資産形成に一歩を踏み出す前提として、利用者の皆様に次のことを理解していただくことが重要だ。まず利用者自身が、各々のライフプランやライフステージを踏まえ、どのような資金ニーズが発生するのか、それに対応してどのような資産形成が必要になるのかをよく考えていただくことだ」と説明しました。
そして、「長期積立分散投資の意義と同時に、投資には様々なリスクや元本割れの恐れもあるということ。資産形成に取り組むに当たっては、NISA以外の選択肢も含め、様々な方法や適切に組み合わせて活用することが重要である」と指摘。「金融機関の皆様におかれては、実際にNISA口座を用いた取引を行う利用者の方々に対し、顧客ニーズやリスク許容度の確認、提案・販売する商品の特性や注意点に関する丁寧な説明、販売後のフォローアップなど、利用者が安心して資産形成に取り組むことができるよう、顧客本位の業務運営に取り組むことが重要だと考える」と話しました。
金融経済教育推進機構については、「講義内容の一つとして、NISAを取り扱うが、資産形成の前提である家計管理やライフプランニングの重要性、長期積立分散投資の意義、iDeCo等のNISA以外の資産形成にする制度についてもしっかりと国民の皆さんにお伝えしていく予定だ」と説明しました。
5大証券社長陣が選んだ「今年の漢字」は?
パネルディスカッションでは、近藤雄一郎・SMBC日興証券代表取締役社長(CEO)、中田誠司・大和証券グループ本社代表執行役社長最高経営責任者(CEO)、奥田健太郎・野村ホールディングス取締役兼代表執行役社長グループCEO、浜本吉郎・みずほ証券代表取締役社長、小林真・三菱UFJモルガン・スタンレー証券取締役社長兼CEOがそろって登壇(記事登場は社名順)。それぞれが選んだ「今年の漢字」を披露し、資産形成の裾野拡大に向けた考えを述べました。
SMBC日興の近藤社長が選んだ一字は「換」。「足元、日本がデフレ経済からインフレへ転換し始め、株価も新高値をうかがう転換点を迎えるている。インフレになって金利も大きな転換点を迎えた。2024年の変化を転換点にして、日本がさらなる成長へ再度チャレンジしていくという意味をこめた」と述べました。
大和の中田社長が選んだ今年の一字は「昇」。「昨年来、まずは物価が上昇し、金利も上昇してますし、今後も上がるでしょう。おそらく賃金も上昇し、経済も上昇して、株価も上昇する。今年は辰年なのでまさに昇竜のごとく、上昇に、全員がうまく乗っかれるような、そういう年になればいいと思う」と語りました。
野村の奥田社長は「始」を選び、「初めての方も、一歩からでいいので(資産形成を)始めていただければ。また、今年はおそらく金利のある世界も再開する。その意味では今年は本当に始まるということがたくさんありそうな、ワクワクする年になるという意味で、始まるという字を選ばせていただいた」と述べました。
みずほの浜本社長は飛躍や跳躍の「躍」を一字を掲げ、「今年は辰年だが、まさに竜が天に昇るイメージ」と強調。「日本経済、株式市場がまさに今日(2月13日)の相場のように上っていくように、資産形成を支える経済・市場がしっかり継続的に昇っていくようにとの願いをこめた」と語りました。
三菱UFJモルスタの小林社長が選んだ今年の漢字は「伴」。「我々金融機関にとって、人と人、投資家と企業、日本と海外、現在と次世代を繋げる仕事が一つの大事な役割。つなぐためにはお客さま、ステークホルダーの皆さんをよく理解しなければいけないと思い、目標に向かってぜひ伴走していきたいなとの思いをこめた」と説明しました。
パネルディスカッションではこのほか、職域などで投資家一人一人に寄り添って伴走役を務める金融機関の役割の大きさにも話が及びました。NISA制度の拡充によってネット系チャネルの存在感がますます増大しているとの見方もあるなか、各社社長は対面チャネルの存在意義を改めて示したいとの思いを発言ににじませていました。