2022年の債券市場は波乱の1年となった。ロシアによるウクライナ侵攻が泥沼化し、世界経済は急速なインフレに見舞われた。各国は利上げを急ぎ、投資家は債券安と株安が同時に訪れるという難局に直面した。今後の債券市場の見通しについて、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)で債券インデックス運用のグローバル・ヘッドを務める、ステファン・イエーツ氏に聞いた。
――2022年の債券市場を振り返っていただけますか。
2022年は「市場の利上げ期待」というレジームシフトが起きた年でした。ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナ、サプライチェーンの混乱でインフレ基調が定着し、債券市場にとっても歴史的な1年になったと言えます。ボラティリティも大きかったものの、急速な利上げがあったに割には致命的な波乱もなく秩序だったレジームシフトとなりました。
急激な市場環境の変化にもかかわらず、2008年の世界金融危機のようなパニックには陥らずに秩序が保たれていた背景としては、当時と違い、低リスク・高クオリティで利回りが期待できる資産が市場に存在していたことがその一因でしょう。資産のリプライシングを進めやすい環境にあるのが大きいと思います。ただし足元、投資家は高インフレを織り込んだうえで利回りの追求を考えなければなりません。中央銀行が一定期間内にインフレをうまく封じ込められるのかが重要になってきます。