楽しみになった猫との時間

翌日、慶子は買い物のついでに猫用のフードを購入した。普段は素通りするペット用品売り場で立ち止まり、いくつもの商品を見比べて選んだものだった。午後になると、キャットフードと容器を持って散歩に出かけた。

「猫ちゃん、いるかしら?」

昨日と同じ場所に近づくと、茂みの奥からあの猫が姿を現した。慶子を見つけるなり、小走りで近寄ってくる。

「あら、今日も会えたわね。ご飯を買ってきたのよ」

慶子は笑顔でしゃがみ、地面に置いた容器にフードを入れた。猫はすぐに顔を突っ込んで食べ始め、慶子はそのそばで様子を見守った。久しぶりに心地よい時間が流れていた。

 

   ◇

 

慶子が野良猫に餌をあげるようになってから、2カ月ほどが経った。

最初は茶白の猫だけだったが、いつの間にか仲間が増え、今では5、6匹ほどが集まるようになっていた。

慶子はそれぞれに親しみを込めて名前をつけている。

「チャチャ、今日も一番乗りね」

いつもの空き地に着くと、最初に出会った茶白の猫が真っ先に駆け寄ってきた。チャチャは相変わらず人懐っこく、慶子の足元に体をすり寄せる。少し離れた場所では、黒猫のクロがこちらを見ていた。

「クロもおいで。今日はこっちに置いてあげるからね」

慶子は持参したフードを容器に分け、猫たちの前に並べた。警戒心の強いクロも、慶子が離れると食べ始める。一方、三毛猫のミケは食べるのが遅く、ほかの猫に餌を取られそうになっていた。

「あらあら、ミケの分まで食べちゃ駄目よ」

慶子はミケの容器を少し離れた場所へ移した。