両親への恩返しを続ける良介

「大学まで行かせてもらったしさ。できるうちは恩返しをしておかないとさ」

良介だって喜んでやっているようには見えない。ただ、断ることもできないという口ぶりだった。

「でもリフォームのお金だって全額あなたが出して、それ以外にお金を要求されるなんておかしいよ。茉莉さんは何をしてるの?」

桜は良介の妹の茉莉の名前を出した。良介はため息をつきながら首を横に振った。

「あいつにそんなことをする余裕なんてないよ。仕事も長続きせずに男とふらふらしてるんだから」

すべてのしわ寄せが良介に来ているように思えた。しかし、良介のことを強く止めることはできなかった。親孝行や恩返しをしたいという気持ちには共感できるからだ。しかし一方で、慶子たちがそんな良介の気持ちを利用しているようにも感じていた。

 

   ◇

 

そんな話し合いから1カ月が過ぎ、お盆を迎えた。

毎年、お盆になると義実家に帰るのが恒例だった。今年も良介の運転で義実家へと向かい、途中、道の駅で休憩を取った。子どもたちがトイレに行っている間に、桜は助手席から良介に声をかけた。

「ねえ、またお金の話されたりしないよね?」

良介は苦笑した。

「さすがに久しぶりに会ってそんな話はしないだろ」

「いや、だって先々週もお金を送ってくれって言われたんでしょ?」

「……まあな。でもそれは額も少なかったし」

桜は良介を見つめた。

「ちょっとずつだとしてもこんなのが長く続いたらとんでもない額になるんだよ? 向こうはもうあなたに頼んだら断らないって思ってるよ」

「分かってる。俺のできる範囲でしかやらないから。皆に迷惑はかけないよ」

良介はそれだけ言って口を閉じた。