際限なく膨らむ義実家への援助
「あなたがリフォームのお金を全部出したことをもう忘れてるんじゃないの?」
「いや、まあ忘れてはないと思う。それも分かった上で金を催促してきてるんだろうな」
義父が少し前に自宅の玄関先で足を滑らせて転倒し、太ももの付け根を骨折していた。手術と入院を経て自宅に戻ることはできたものの、以前のように歩くことができなくなり、杖を使って生活をするようになった。
義実家は昔ながらの古い家屋で、玄関の上がり框には大きな段差があり、浴室にも手すりがない。この状態では義父が生活しづらいということで、リフォームをしたいと慶子から申し出があった。
良介からリフォーム代を出すつもりだと言われて、桜は反対しなかった。ただ、慶子が義父の生活とはまったく関係ない部分までリフォームを要求したことで、当初よりもかなり額が上がったことと、そのことへの感謝がまったくなかったことへのモヤモヤがあった。
「リフォーム代でとんでもない額を出したのに……」
「……だよな。でも親父も仕事ができなくなって生活が苦しいって言われたらさ……」
「それはしょうがないと思うよ。でもこっちにも生活があるんだから」
桜と良介は共働きだった。良介は産業機械を扱う会社に勤めていて、営業部の課長をしている。同年代の人たちと比べると給料はもらっているほうで、桜の収入も合わせれば決して少なくない額になる。それでも子どもの将来のこともあるし、義両親のためにばかりお金を使うわけにはいかなかった。
