資産形成・資産運用にまつわる実践的かつ効果的な情報提供を行うMUFG資産形成研究所。同研究所のウェブサイトに掲載された論文・レポートを再編集してお届けする(掲載元の執筆日:9月29日)。

要旨

・近年、ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)スコアおよび金融リテラシー指数は低下傾向にあり、インフレ、地政学リスク、金融制度の複雑化などが、生活者の経済的不安を高めている可能性があります。社会経済環境の変化をフォローする継続的な金融経済教育が必要です。

・FWBとの関係性は、年齢や年収よりも金融リテラシーおよび保有金融資産との間で強く、同程度の資産水準であっても金融リテラシーが高い層ほどFWBが高い傾向がみられます。

・企業の施策として金融リテラシー向上に取り組みFWBを高めることは、従業員の安心感、働きがい、組織への関与を支える重要な取り組みと考えられます。

当研究所では「金融リテラシー1万人調査」注1を毎年定期的に実施し、働く世代の資産形成や金融行動に関する実態を調査している。本調査は、企業勤務者、公務員、自営業・自由業・フリーランス、専業主婦・主夫を対象に、ファイナンシャル・ウェルビーイング(以下FWB)、金融リテラシー、資産形成行動、退職給付制度、職場環境評価等を把握することを目的として実施されたWebアンケートである。2026年調査は、企業勤務者8,500名、公務員500名、自営業・自由業・フリーランス500名、専業主婦・主夫500名の合計10,000名を対象としている。

本稿では、当該調査結果を用いて、FWB、金融リテラシーのこの2年間の変化および、従業員エンゲージメントを含めた各項目の関係性について考察を行う。

1.ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)スコアの変化

[図表1]ファイナンシャル・ウェルビーイングスコアの推移(全体)

 

当研究所ではFWBを「現在および将来、お金に追われず、(お金に)人生の選択肢を縛られず、(お金の)安心感がある状態」と定義し、FWBを構成する6要素注2についてアンケート調査を行い、回答内容を100点満点でスコア化している。

3時点のFWBスコア全体の変化をみると、2024年調査から低下傾向を示している。この3時点の経済環境としては、株価の上昇により全体として金融資産の増加が認められ、FWBにはポジティブな効果があると考えられるものの、継続的なインフレ、世界情勢の不安定化、円安などの外部要因がネガティブな回答を増やした可能性がある。

データを分解し職業別のFWBスコアの推移を比較する。企業勤務者、公務員、専業主婦・主夫、自営業等、いずれにおいても低下傾向であるが、顕著な変化として、公務員のスコアが2025年から2026年で大幅に低下している(54.2→49.9)。これはサンプル数が500件と企業勤務者の8,500件と比べて小さいため、誤差も含まれていると考えられるが、保有する金融資産額(以下、保有資産)に着目すると、その増減で違いがみられた。

[図表2]職業別FWBスコアの推移

 

過去の調査結果も含め、保有資産が多いほどFWBが高い傾向が確認されている。当調査では保有資産のランク(0円~1億円以上で低い方から1~11段階)注3の回答を得ているが、その段階(1~11)の平均値について、2025年から2026年の変化を見てみると、企業勤務者で上昇(5.547→5.728)していたのに対し、公務員は低下(5.817→5.636)していた。今回の公務員におけるFWBスコアの低下要因として、影響している可能性がある。