時代は変わり、多様な生き方が認められる一方で、「男の子が一番偉い」という古い価値観がいまだに常識としてまかり通っている家庭も存在します。性別だけで露骨に扱いを変えられれば、大人だけでなく幼い子どもの心にも深い傷を残しかねません。何世代にもわたって染み付いた「家族の歪なルール」は、決して変わらないものだと諦めるしかないのでしょうか。

祝福されない第一子の誕生

「女の子なんて跡取りにならないんだから、わざわざお祝いを包む必要なんてないだろ?」

産院のベッドの上で、夫が義母と電話で話す声が耳に届いた。会社員の美咲(34歳)は、生まれたばかりの長女・結愛を抱きながら、信じられない思いで夫の健太(36歳)を見つめていた。

美咲は食品メーカーで時短勤務をしており、健太は中堅メーカーの営業職。世帯年収は約700万円、将来のためにコツコツと貯めた貯金額は400万円ほどだ。結婚当初、健太は優しく頼りがいのある夫だった。しかし、彼の実家は、絵に描いたような男尊女卑の家庭だったのだ。

地方の一部にはそういった考えが根強く残っていることはなんとなく理解していたが、それが夫の実家となると、嫁の立場として美咲は気苦労が絶えなかった。

結愛が生まれても、義両親が会いに来ることはなく、出産祝いも送られてこなかった。「女の子だから」という理由だけで、露骨に距離を置かれたのだ。

座って飲むだけの夫と義父

年末年始の帰省は、美咲にとって憂鬱でしかなかった。義実家では、男たちはこたつにどっしりと座って酒を飲むだけで、動こうとはしない。「女が身の回りの世話をするのが当たり前」という空気が充満しており、美咲と義母は朝から晩までキッチンに立ちっぱなしだった。

結愛が「パパ、遊ぼうよ」と袖を引いても、健太は「男は酒を飲むのが仕事なんだから、あっちでママと遊んでなさい」と冷たくあしらう。義両親も結愛を抱っこしようともせず、「次は早く男の子を産みなさいよ」と嫌味を言うばかりだった。

男尊女卑の激しい家庭で育ってきた健太も、それを少しもおかしいとは思わず、当然のように受け入れている。美咲は結愛を守るため、義実家とは適度な距離を保とうと必死だった。

しかし、事態が急変したのは、3年後に第二子である長男・大翔が誕生したときだった。