唯一の救いは同僚との1000円ファミレス飲み
役員室を出たところで資材課の星野さんと出くわしました。1歳上の星野さんは社内での数少ない私の友人です。やり切れない思いが顔に出ていたのか、「今日、定時で帰れるの? “飲み会”どう?」と誘われました。私も鬱々とした気持ちを誰かに聞いてほしかったので、「じゃあ、いつものデニーズで」と返しました。
お酒を嗜まない私たちの“飲み会”は会社から少し離れたデニーズのドリンクバーのセットが定番です。アイスクリームやパンケーキを付けても1人1000円もしない値段で広々としたソファに座ってまったり話ができるのですから、コスパ最強です。
実はこの日、星野さんにも私に伝えたくてたまらない情報があったようです。席に着いて注文を入力するやいなや、「知ってる? 新入社員君、今月で辞めるらしいよ」と切り出しました。
この4月には珍しく、勤務先に新卒が入社しました。建築学科出身とあって、社長をはじめ役員は現場経験を踏ませながら大事に育てていこうと考えているようでした。
5月には研修で営業部にも1カ月ほど在籍していましたが、よく言えば温和で素直、厳しめに言うなら意欲や野心が感じられない典型的な“いまどき男子”という印象です。
「専務に、『この会社ではキャリアビジョンが描けない』って言ったって」と聞いて、あの子がそんな口を利くんだと驚きました。
「いいよね、最近の新入社員なら売り手市場だし、いくらでもキャリアビジョンが描ける会社に転職できるんじゃないの?」と皮肉ると、星野さんは「ホント、私たちって人格崩壊するくらい就職試験に落ちまくったものね。違う時代に生まれたかったよね」と愚痴り、私たちはいつもの氷河期世代トークに入っていったのでした。
●勤続28年にもかかわらず年収300万円台が続いていた萩原さん。突然の減給に衝撃を受けますが、それでも転職に踏み切れない切実な事情がありました。後編【「底辺に近い生活だと自覚しています」食費月2万円、真夏もエアコン我慢…50歳女性が減給されても会社を辞められない「切実な理由」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
