仕事は増えているのに「月2万円減給」の衝撃

「この業界もなかなか競争が厳しくなっている中で、うちの会社も人事制度の見直しをしていてね。いわゆる成果主義というやつで、業務内容に応じた報酬をお支払いしようというわけだけど。営業事務にはほら、今年から丸山さんが入っているよね。彼女と仕事の分担を行う以上、萩原さんの報酬はもうちょっと減額させてもらってもいいかなと。まぁ、そういうことなんだよね」

テーブルの上に広げられた私の給与明細と新給与の試算を見ると、支給額ベースで月額2万円ほど減っていました。「あり得ない!」と思いました。

丸山さんはこの4月から入社した28歳の事務社員です。社長の飲み仲間のお嬢さんだということは社内の誰もが知っています。私から見れば娘のような年齢ですから一挙手一投足に目くじら立てても仕方がないのですが、派手なネイルアートを施した長い爪をひけらかしながらのデータ入力はカメの歩みの如く遅く、雑な性格でうっかりミスも多いので、フォローが欠かせません。事情を知っている営業部の面々は当然のように、急な仕事は私に頼んできます。

結果として、彼女が来る前よりも余計な仕事が増えました。その状況で人手が増えたから減給というのは全く解せない話です。

しかし、上が決めたことに対して私が何を言おうと無駄でしかありません。なぜなら、うちの会社は創業家4代目の社長の個人商店だからです。要は、「社長の決定=神の声」なのです。

周囲を見回せば丸山さんのような縁故入社がごろごろいますし、極め付きは社長の愛人だという私よりひと回り下の秘書課長です。課員が誰もいない秘書課で課長を名乗り、社長の出張にしょっちゅう同行しているだけでなく、役員会にまで顔を出して勝手のし放題だという噂です。

そんな社内で私のようなモブ社員はいいように使われるだけです。