物価高を上回る賃上げ。この数年、よく聞く言葉です。「でも、そんなことが可能なのは大企業だけ。地方の中小企業の中堅社員は悲惨です」と嘆くのは、大卒後、関東地方の建設会社に入社して28年になる萩原智恵子さん(仮名)。
萩原さん自身はなんと、この夏、勤務先から減収を言い渡されたのだとか。萩原さんは都内の有名私大の外国語学部卒。語学力を生かして商社や貿易会社への就職を目指していましたが、うまくいかず、故郷に戻って就職しました。
萩原さんの世代は就職氷河期ど真ん中で、志望する業界ではほとんど求人がなかったのです。「今の新入社員がうらやましい。違う時代に生まれたかった」と話す萩原さんに、減収の経緯や今の暮らしぶりについて聞きました。
〈萩原智恵子さんプロフィール〉
関東地方在住
50歳
女性
会社員
賃貸マンションに1人暮らし
金融資産450万円
「専務に連絡を」夏休み明けに受けた突然の呼び出し
夏休み明けの月曜日、昼休憩から帰ってきたら、デスクの上に「専務に連絡お願いします」というメモが貼ってありました。
勤務先は社員が60人程度の小さな会社ですが、私のような末端の社員に専務から呼び出しがかかることなど滅多にありません。内線をかけると「今から来られるか?」と言われ、どうせろくなことではないだろうなと思いつつ、2階の役員室へと急ぎ足で階段を上がりました。
役員室の引き戸を開けた瞬間、斜め前の席に座っていた専務と目が合い、目線で会議室へと誘導されました。
薄暗い会議室で待つこと1分。書類を手に入ってきた専務は「よお、元気でやってる?」とわざとらしい声がけをし、私の正面の椅子にどっしりと腰を下ろしました。
「萩原さんは本当に良くやってくれていると営業部長からも聞いているから、本当に申し訳ないんだけれど……」
専務の第一声で、予想通り、私にとってはバッドニュースなのだと察しました。
