「通帳残高、3万2000円」将来の計画が一瞬で消え去った絶望

翌朝、一睡もできないまま、私は我が家のすべての通帳をひっくり返した。娘の教育資金、将来のマイホームのための頭金。コツコツと貯めてきたはずの口座を確認するためだ。

そこで恐ろしい事実が判明した。

健太が管理していた「生活費決済用の口座」の残高は、わずか3万2000円。本来なら150万円は残っているはずの口座だった。彼は私の目が届かないのをいいことに、生活費口座からも限界まで金をむしり取って、毎月のカードの引き落としに充てていたのだ。

「あり得ない……」

娘が保育園で描いてくれた「パパとママの絵」が、壁から私たちを見下ろしている。娘の笑顔、守りたかった温かい家庭――すべてが夫の身勝手で消えていく感覚がした。

あらゆる負の感情が脳内を駆け巡り、私は涙すら出なくなった。

離婚を決意するも…本当にそれが正解なのか

「離婚してほしいの。あなたとはもう無理だと思う」

私は冷徹に言い放った。健太は「それだけは許してくれ、娘と離れたくない」と激しく号泣しながら縋り付いてきたが、私の心は完全に凍りついていた。信頼がゼロになった人間と、どうやって人生を共にできるというのか。250万という重い数字は、私たちの関係を修復不可能なまでに切り裂いていた。

しかしその時、テーブルの上に置かれた健太のスマホに、1通のポップアップ通知が届いた。

何気なく目を落とした私は、そこに書かれた文字を見て、再び息が止まった。

『〇〇クレジットより大切なお知らせ:お支払いが確認できておりません。カードのご利用を一時停止いたしました。至急、裏面の窓口まで――』

それは、彼が「まだ大丈夫、これから自分で返せる」と言い訳していた引き落としが、すでに完全に破綻していることを示す、決定的な破滅の合図だった。

●夫の身勝手な裏切りに一度は絶望した妻・美穂。しかし、目の前で夫のカードが完全に停止した瞬間、彼女の中で「ある冷徹な計算」が働きます。感情を捨て、鬼となった妻が仕掛けた作戦とは? 後編【夫の裏切りが招いた家計破綻の危機…離婚決意から一転、妻がまさかの覚醒へ。スパルタ管理で挑んだ再構築の奇跡】で詳説します。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。