ようやく分かった叱られた理由

講座の日、喜代子は開始時間より早く地区センターに着いた。会議室には長机が並び、すでに何人かの参加者が座っている。

「すみません。お隣よろしいですか」

スマホを手にしたまま不安そうに画面を見ている、自分と同年代らしい女性に声をかけると、その人は愛想よくうなずいた。

「ええ、どうぞ。私も初めてで、よく分からないんですよ」

分かっていないのは自分だけではない。そう思うと、肩に入っていた力が抜ける。

「みなさん、こんにちは」

時間ぴったりにやってきた講師は、若い男性だった。大きな画面に資料を映しながら、ゆっくりした口調で話し始める。

「今日は、スマホやSNSを安全に使うための基本をお話しします。特に写真の投稿は、便利で楽しい反面、注意が必要です」

講師は、風景写真と人物写真の違いから説明した。顔、名前、制服、建物、看板、行事名。そうしたものが写り込むと、本人の生活範囲や通っている会社や学校が分かってしまうことがあるという。

「たとえば、お孫さんの学校行事の写真を載せたとします。孫がかわいい、誰かに自慢したい、という軽い気持ちで投稿したとしても、お孫さんの顔や名前、学校など、個人情報まで特定されてしまう恐れがあります」

思わず喜代子は息を止めた。まるで自分のしたことを、そのまま例に挙げられているようだった。

「たとえ親しい知り合いだけに見せているつもりでも、その先で誰が見るかは分かりません。一度インターネットに出た写真は、完全に消すことはできないと思ったほうがいいです」

前方の席で誰かが小さくつぶやいた。

「そんなに怖いものなんですね」

講師は大きくうなずいた。

「SNSを過度に怖がりすぎる必要はありません。ただ、本人や保護者の許可なく、子どもの写真を外部に出さない配慮が大切です。家族間で写真を送ることと、SNSに投稿することは、全く意味が違います」

喜代子は、ようやく自らの過ちを悟った。里美と隆二に責められたとき、正直そこまで怒らなくてもと思っていた。しかし、今は違う。

自分は莉乃の写真を、家族の許可なく公開してしまったのだ。莉乃を守る立場の里美と隆二からすれば、不安になって当然だ。

家に帰ったら、里美と隆二に連絡しよう。自分が何を間違えたのかを理解したうえで、きちんと謝りたい。そう心に決めて、喜代子は会議室をあとにした。