義母への電話も空回り

子どもたちが部屋へ戻ったあとも、律子はリビングに残っていた。テーブルの端には、2つの白い封筒が重ねてある。「内緒」で子どもたちに渡されたものだったとしても、礼を言わずに済ませるわけにはいかない。律子は義美に電話をかけた。

「あら、律子さん。無事に着いた?」

「はい。いろいろ持たせていただいて、ありがとうございました」

「いいのよ。航大くんと怜美ちゃんに会えて、私も楽しかったから」

そこで律子は息を整えた。

「それで、お小遣いのことなんですが。お年玉とは別に、封筒を渡してくださっていましたよね」

「ああ、それね。2人とも欲しいものがあるみたいだったから、少し足しにと思って」

少し、という金額ではない。

「かなり大きな金額でしたので、使わない分はそれぞれの口座に入れることにしました。今後は、渡す前に一言いただけると助かります」

「あら、好きに使わせてあげればいいのに。律子さんは少し厳しすぎるんじゃない?」

「そうでしょうか」

「そうよ。航大くんも怜美ちゃんも、私にはいろいろ話してくれるんだから」

義美の声には、どこか自慢げな響きがある。孫に頼られている自分をアピールしたいのだと、律子にはすぐに分かった。

「話しやすい相手がいるのはありがたいです。ただ、お母さんには内緒、と言って渡されると困ります」

「そんな大げさなことじゃないでしょう。おばあちゃんからの気持ちよ」

「お気持ちはありがたいです。でも、親にも分かる形にしてください」

「でもねぇ……今の子はお金もかかるでしょう。親に言いにくいこともあるのよ。まあ、律子さんが普段から厳しくしているから、私に頼ってくるのかもしれないわね」

移動疲れとは別の疲労感が、どっと全身に広がった。律子はため息を堪えて言った。

「とにかく今後は、黙ってお小遣いをあげるのはやめてください」

義美は「はいはい」と返し、土産物の話へ移った。

全く通じていなかった。最初から聞く気がないのだ。

通話を終えると、律子はスマホを置き、ソファに身を投げた。