母親と協力してなんとか通院を継続
検査当日。順子さんは面倒くさがる秀一さんをなだめすかし、検査を受けさせました。
検査の結果、秀一さんには発達障害のひとつである自閉スペクトラム症の可能性が高いとの診断を受けました。これで第一関門は突破できました。
次は初診日から1年6カ月が経過するまで受診を続けることです。本当なら順子さんが毎回受診に同行したいところです。しかし順子さんはフルタイムで働いており、子育てと家事もしているのでそこまでの余裕はありません。そこで母親に協力してもらい、秀一さんを病院に連れて行ってもらうようにしました。
母親は物忘れがしばしば起こるようになっているので、念のため通院の前日に順子さんから秀一さんへ連絡を入れるようにしました。
「明日は通院日だよ。覚えてる?」
秀一さんは順子さんの連絡で通院を思い出す始末。不安になった順子さんは、通院当日も連絡を入れるようにしました。そのおかげで、秀一さんは何とか通院を続けることができそうです。通院を続ける仕組みも整い、これで第二関門も突破です。
そしていよいよ最後の関門。文書の作成です。
まず秀一さんが自閉スペクトラム症で日常生活にどの程度の困難さを抱えているのか。具体的なエピソードを文書にまとめます。次に病歴就労状況等申立書です。こちらには幼少期から現在までの状況を記載していく必要があります。
それぞれの文書は筆者が作成できますが、そのためには順子さんや母親から事細かにヒアリングをしなければなりません。
順子さんは忙しく、何度も面談をしてヒアリングする時間がとれなかったため、メールのやり取りを繰り返し秀一さんの情報を教えてもらうことになりました。途中、順子さんからの連絡が途絶えてしまうこともありましたが、それでも何とか日常生活の困難さと幼少期から現在までの状況をまとめることができました。
そうこうしているうちに初診日から1年6カ月が過ぎたので、主治医に日常生活の参考文書と診断書を渡し事情を説明。無事に診断書を入手することができました。その後、筆者がその他の必要な書類を揃え、請求を完了させました。
2級が認められ障害基礎年金受給へ
請求から3カ月が過ぎた頃、順子さんから報告がありました。
「おかげ様で兄は障害基礎年金の2級が認められました。長い間ご協力いただき、本当にどうもありがとうございました」
確かに筆者は請求に向けて協力をしましたが、それでも順子さんの頑張りがなければ、秀一さんは障害基礎年金を受給することはなかったことでしょう。
順子さんには家庭や仕事があり、時間や労力を割くのは並大抵のことではなかったはずです。
順子さんの覚悟や行動力に、筆者は頭が下がる思いがしました。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
