<前編のあらすじ>
51歳の大里秀一さん(仮名)は、長年ひきこもり生活を続けてきました。父の死後、妹の順子さんは、80代の母と無収入の兄の行く末を案じます。
妹は母を連れて社労士を訪ね、障害年金の相談をすることに。家族の共倒れを防ぐため、順子さんは兄を救うべく覚悟を決めて行動を開始します 。
●前編:【8050問題】父亡き後も働く気ナシ…ひきこもり歴30年・無職無収入の長男と高齢母が直面した「共倒れ」の危機
ひきこもりの兄は受診に協力してくれるのか
筆者は妹の順子さんと母親に言いました。
「そもそも兄の秀一さんが受診をしてくれるかどうか? そこが問題です。本人が受診を拒否してしまうとそこから先に進めないからです。さらに受診をしてくれたとしても、その先にもハードルがあります。障害年金(障害基礎年金および障害厚生年金)は、初診日から1年6カ月が経過した日以降に請求することになっています。つまり、少なくとも1年6カ月を迎えるまで受診を継続させることが望ましいのです。しばらく受診を中断してしまい、請求ギリギリになって受診を再開。そこで医師に『診断書を作成してください』とお願いをしても医師も困ってしまうからです」
これを聞いた順子さんは頷きました。
「なるほど。兄に受診に同意してもらい、さらに受診を続ける必要がある……。何か方法を考えなければなりませんね。ちなみに兄は障害基礎年金を受給できそうなのでしょうか?」
「障害基礎年金が受給できるくらい障害状態が重いかどうかは主に診断書で判断されます。そのため、診断書を依頼するまでに発達障害でどのくらい日常生活が困難なのかを文書にまとめる必要があります。さらに病歴就労状況等申立書という別の書類には幼少期から現在までの状況をまとめる必要があるのです」
「診断書に病歴就労状況等申立書……。何だか難しそうですね」
順子さんは険しい表情になりました。
「確かに請求に向けてやるべきことは多いですが、文書の作成は私でもできます。ご安心ください。何はともあれ、まずはお兄様が病院を受診してくれるかどうかです」
「そこは私の方で何とかしてみます。もう兄には後がありませんので」
そう言った順子さんの目には、ゆるぎない覚悟の火がともっているように感じられました。
