「評価最高、ボーナス減額」ついに堪忍袋の緒が切れた

決定的だったのは、夏のボーナス支給日だった。

個人の査定面談で、部長は申し訳なさそうな顔ひとつせず、こう告げた。

「佐藤、お前の評価は最高ランクだ。だが……すまん。若手のベースアップに予算を食われて、中堅以上の賞与係数を一律で下げざるを得なかった」

提示された金額は、前年比でマイナス10万円。

一方で、河野たち新人は「一律支給」の恩恵を受け、去年の新人よりも大幅に多いボーナスを手にし、給湯室で「ボーナスでMacBook買うわ」と騒いでいる。

「……そうですか」

私は立ち上がった。

「佐藤、分かってくれ。会社を存続させるためには、若い力が必要なんだ」

「分かっていますよ。十分すぎるほど」

その日の夕方、トラブルが発生した。

河野が担当する重要な管理物件で、漏水事故が起きたのだ。入居者は激怒し、一刻を争う対応が必要だった。

「佐藤さん! どうしましょう、相手が反グレみたいな人で……僕、怖くて行けません!」

河野が半泣きで私の袖を掴む。

以前の私なら、ため息をつきながらも「貸せ、俺が行ってやる」と立ち上がっただろう。