悟志が手にした見覚えのない口座
日曜の午後、家の中は妙に静かだった。
受験生の結衣は自室で勉強をしていて、翔太は部活に出ている。真里は友人と買い物に出かけ、夕方まで戻らないと言っていた。
悟志はスマホで賞与の明細を開き、1人うなっていた。年度末の決算以来、頭の隅に金銭的問題が居座っている。せめて毎月の固定費だけでも見直せないか。珍しくそんなことを思い立ち、2階へ向かった。
「保険の更新、去年どうなってたかな……」
独り言を漏らしながら、部屋の隅に置かれて普段は真里が管理や整理をしてくれている書類ケースを引き寄せる。
公共料金、学校関係、医療費の控え。仕切りごとに中身を確かめていくうち、奥のポケットに銀行の通帳が入っているのが見えた。何気なく抜き取る。真里名義の見覚えのない口座だった。
「こんなの持ってたのか……」
多少の罪悪感を抱きつつ通帳を開くと、記帳欄には不定期な入金の中に時折出金の履歴がある。1回の入金額は、数万円程度。決して大きな額ではないが、長い間途切れずに積み上がっていた。最新の残高は悟志が思っていたよりずっと大きい。
「こんなに貯め込んでたのか……」
悟志は通帳を閉じ、しばらくそのまま床に座り込んでいた。
真里がへそくりを隠していた。
その事実が鮮明に胸に残る。収入のことで思い悩んでいた自分が惨めに思えた。
