慎太郎の懐事情
昼休憩を迎えると後輩の敦が声をかけてきた。
「先輩、飯行きましょうよ」
「そうだな。久しぶりに社食に行こう」
慎太郎がそう言うと、敦が意外そうな顔をする。
「珍しいですね。美味しくないから行きたくないって言ってませんでした?」
「背に腹は代えられないんだよ」
そう言って慎太郎は敦と2人で社食に行った。
Aランチのからあげ定食を食べながら慎太郎は金欠状態であることを話した。
「確かにこの間行った店、高かったですもんね」
「給料日までは社食で我慢しないとダメなんだ。敦は無理して付き合わなくていいぞ。好きなところで飯を食っていいんだ」
「いや俺はここの飯も嫌いじゃないですから」
そう言って敦は豪快に白飯を口に入れた。
「でもそれなら奥さんにお願いしたらいいんじゃないですか? そもそも先輩、小遣い少ないですし」
「いやまあ、そういうわけにもいかないんだよ」
慎太郎は言葉を濁した。
結婚したばかりの頃は、各々で貯金をしておくという約束のもとで好きにお金を使っていた。
しかし、慎太郎は当時の取引先の上役に連れられて行った競馬にハマってしまった。付き合いだからという心の中での言い訳はいつの間にか消え、貯金を使って遊ぶようになると、気がついたときには80万の借金ができていた。
慎太郎はその借金を美菜に隠したまま完済をしようとしていたのだが、送られてきた督促状が美菜に見つかった。慎太郎は当然怒られた。そして、美菜が管理する夫婦共有の口座を作り、小遣い制にすることを条件に、美菜が自分の貯金を崩して完済してくれた。もちろん2度とギャンブルをしないという約束もした。
それまでに比べてかなりの制限が入るようになったが、慎太郎としては美菜の貯金を使わせてしまった罪悪感もあり粛々と受け入れて、今まで生活をしてきていた。
「そうなんですねえ」
敦が深く聞いてこなかったので話はここで終わった。
