気まぐれに押した投稿ボタン
早和子は反射的に閉じかけ、少し迷ってからアプリを入れる。題材は、月曜の朝に出社したくない会社員。どこにでもあるような小ネタだ。文章を入れ、少し直し、また生成する。すると、動きは多少ぎこちないものの、それらしい数十秒の動画ができあがった。
「ひどい動画」
早和子は完成した画面を見て、眉をひそめた。
自分で描いたわけではない。ただ指示を入れただけだ。
「……何やってるんだろ。大してフォロワーもいないくせに」
半ば自分に呆れながら、早和子は投稿ボタンを押した。そして気まぐれに作った駄作の反応から目をそらすように、スマホを置いて眠りについた。
◇
翌朝、早和子は目を覚ますと、枕元のスマホを手に取った。アラームを止めるつもりだったのに、通知が先に目に入る。
昨夜投稿した動画に、いいねとコメントがいくつも付いていた。
「……え」
寝ぼけた頭のまま画面を開く。再生数は、早和子の予想をはるかに超えていた。通知欄には同じ動画への反応が並び、見知らぬアカウント名が途切れなく続いている。
「なんで……」
思わず声が漏れた。信じられない気持ちだったが、数字は何度見ても減らない。むしろ、顔を洗い、着替えている間にも少しずつ増えていった。
通勤電車の中でも、吊り革につかまりながら、早和子はつい画面を開いてしまう。コメント欄には、「これわかる」「朝の自分すぎる」「地味に好き」といった軽い反応が並んでいた。その中に、「こういうの量産してほしい」「次も見たい」という言葉も混じっている。
「量産って……」
