未来にとっての卒業式…

「ねえ、お願い。そんなふうに言わないで」

冴子は濡れた目元を指先で押さえた。口を開こうとしても、また同じ言葉しか出てこない気がした。未来は少しだけこちらに身を乗り出し、冴子の顔をまっすぐ見た。

「えっと……袴のこと、気にしてくれてるんだよね」

冴子は小さくうなずく。

「それだけじゃないけど……でも、やっぱり、未来には申し訳ないって思うの」

「お母さんがそう思ってるのわかった。でも私、自分がかわいそうだなんて全然思わないよ」

その言葉は、すぐには受け入れられなかった。反応の薄い冴子に、未来は責めるでも慰めるでもない口調で、淡々と続けた。

「今まで楽だったとは言わない。でも私、大学4年間すごく楽しかったよ」

「未来……」

「好きなだけ勉強できたし、仲のいい友達もできたし、すごい先生にも出会えた。奨学金借りてるし、バイトだって大変な日もあったけど、あれはあれで意味があったと思ってる」

未来は一度言葉を切り、さっきまで見ていた写真のほうへ目をやった。

「今日だって、普通に嬉しかったよ。みんなと写真撮って、先生にも挨拶して、ああ私、ちゃんと卒業できたんだなって思えた」

「でも、袴は……」