賃上げによる新規採用 中小企業は大企業に比べて消極的
先ほど触れたように8割を超える企業が賃上げを実施すると回答していたわけだが、その理由は何なのか。調査によれば、最も回答率が高いのは「従業員の離職防止」で78.0%。次いで「物価高騰への対応」(71.7%)、「新規採用を円滑にするため」(50.1%)と続く。「業績向上分の還元」は33.3%、「業績見通しの好転」は7.6%にとどまり、業績よりも人材確保や物価高騰の観点から賃上げを行う企業が多い。
規模別で格差が大きいのは「新規採用を円滑にするため」や「従業員の離職防止」で、中小企業は大企業に比べて割合が低かった。従業員数が少ない中小企業にとっても人材確保は重要な経営課題のはず。しかし後述するように、原資が限られるなかで、賃上げしてまで人材確保を行うかは企業によって判断が分かれるようだ。
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賃上げできない企業も。その理由とは
賃上げできないのは何がハードルになっているのか。調査では、2025年度中に賃上げを「実施しない」と回答した企業にその理由を質問している。
結果、最も回答率が高いのは「原材料価格・電気代・燃料費などが高騰している」で49.5%だった。僅差で「コスト増加分を十分に価格転嫁できていない」(48.4%)、「受注の先行きに不安」(44.7%)と続く。やはり昨今の物価高騰と価格転嫁の難しさを理由に挙げる企業が多い。
規模別で見ると、「受注の先行きに不安」で格差が大きく、中小企業は大企業に比べて28ポイント以上高い。業績に自信がもてず、賃上げに踏み切れない中小企業が多いのだろうか。また「増員を優先」では中小企業が大企業に比べて16ポイント以上低い。
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