リストに記載された1億近い金額

私が妹より多く受け取っていた分は“遺産の先取り”としてしっかりカウントすべきだと言います。そして準備周到にも、私の特別受益と推察される項目と、その想定金額まで記載したリストを持ち出したのでした。

そこには、私立のお嬢様学校の費用(小学校から大学まで、公立だった自分との差額)1500万円、お受験の塾・バレエ・ピアノ・絵画などのレッスンにかかった費用2000万円、アメリカの大学の大学院への留学費用(2年間)2000万円、結婚式費用500万円、新居購入費用2000万円……など、合計1億円近い金額が記されていました。

これには目が点になりました。何を今さらという感じです。

そもそも、私が私立に入学したのは母に「受けてみたら?」と言われたからです。特に私が通った学校は制服がかわいい名門校として有名で、亡くなった祖母や母が私にその制服を着せたがったのがきっかけでした。

しかし、祖母も母も妹には私の母校の受験を勧めることはありませんでした。地味で引っ込み思案な妹だって、きらきらした名家の子女が集まるような学校には通いたくなかったのではないかと思います。

習い事をたくさんしていたのは確かに私の希望もありました。

けれど、多方面に好奇心旺盛な私を「いろいろチャレンジできるのは今だけだから、やりたいことをやって理奈の才能が発揮できる対象を見つけていけばいい」と励まし、背中を押してくれたのは両親でした。

妹だって「ピアノを弾いてみたい!」「絵が習いたい!」と言えばいくらでも習わせてもらえたはずですが、妹自身が家で絵本を読んだり、ゲームをしたりしていることを好んでいたように私には見えました。