finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
いまだ見えざるリスクの芽 与信管理の“バタフライ・エフェクト”を予測する

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第18回:40年ぶりの運賃区分統合実施!JR東日本の運賃改定が各セクターに及ぼす影響は?

佐々木 城夛
佐々木 城夛
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
2026.03.13
会員限定
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」<br />第18回:40年ぶりの運賃区分統合実施!JR東日本の運賃改定が各セクターに及ぼす影響は?

3月14日に予定されている東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)の運賃改定。本稿では、主に預貯金取扱金融機関の融資取引先にもたらす影響について、考察していきたい。

東京駅付近で自由行動時間を過ごす修学旅行中の高校生たち(筆者撮影)

 

今回の運賃改定は、「区分の集約に伴う値上げ」が核となっている。現行の4区分(①利用者の多い首都圏の「電車特定区間」と、②「山手線内」、③それ以外の主要路線である「幹線」④(割安ではなく)通常運賃として設定されていた「地方交通線」)のうち、①②③を統合し、旧幹線とは別の新たな枠組みとして「幹線」に分類。この新枠組みの「幹線」と、既存の④の枠組みを引き継いだ「地方交通線」との2区分に整理する。

これに伴い、「東京-新宿」間が210円から260円へ、「東京-横浜」間が490円から530円に値上げされる。京王電鉄などが、「新宿-京王八王子」や「新宿-高尾」間の低価格などを訴える検索広告まで出稿している実状には、乗客獲得を巡る競争の激しさを印象づける。

 

実質的な値上げの背景には、輸送人員がもたらす旅客運輸収入の伸び悩みがある模様だ。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に世界は大きく変容したが、JR東日本を取り巻く経営環境もその例外ではなく、輸送人員は2019年3月期の水準までなお戻っていない。定期券を使用しない「定期外」の人員は2025年3月期が2020年3月期を既に上回ってもいることから、輸送人員数全体の落ち込みが、テレワークや自転車通勤などの普及・定着に伴う定期券購入・利用者の減少によってもたらされていることが分かる。

エンドユーザー向けサービス事業者目線で事業計画を策定する際には、まずもってリピーター層を固め、その上で浮動層の呼び込みを企図するのが定石だ。JR東日本の場合は、リピーター層である定期券購入・利用者が回復していないため、計画策定に悩まされたことだろう。そうした中、リピーター層への単価引上策のひとつとして、中央線へのグリーン車の導入などが実施されたと推察できる。

 

他方、利用者目線では恒久的な値上げの負担感は極めて大きい。それゆえに、心理的な面を含め、影響が広く長く及ぶ事態が見込まれる。ここからは影響範囲をおおまかに3つに分類して、それぞれ掘り下げる。

 

 

2025年9月公表の内閣府のデータによれば、2023年時点の民営借家居住者の「住居費(賃料)の世帯年収に占める割合」は、年収200~300万円世帯では全国平均で25%、東京都では33%に達している。2018年との比較でも、住居費の割合が微増している模様だ。

 

2月25日に公表された2025年の毎月勤労統計調査(確報)では、「持ち家の帰属家賃を除く総合」で実質化した実質賃金が、前年比-1.3%となり、対前年比のマイナスが4年連続となった。

 

 

2つのデータは、ただでさえ住居費の占める割合が高まってきていた中で、住居費を除いた実質的な賃金がインフレなどに連動せずに目減りしていることを意味する。1年のうち身上異動が最も多い3月は、(2年ごとなどの)家賃更新が最も多くなされる月でもある。近時の地価上昇に伴う固定資産税の上昇や、物件の管理・修繕費用の上昇などを家賃に反映したいと考えるオーナーは珍しくない。そうした結果示される家賃の上昇に、JRの運賃改定が積み重なることで、転居を決断する若年層の単身者などが相当数に達する事象を見込む。

 

この際の移転先としては、「通勤手当の支給額内」が意識されることになろう。従業員の出勤負担を補助する通勤手当は、厚生労働省により実施された2025年の就労条件総合調査で90.2%の企業・団体などでの支給が確認されている。他方、あまり知られていないものの、支給を義務付ける労働法規や上限額などの規定は一切ない。事業者目線では、支払わなければならないものではなく、「いくらまで出すか」等の裁量も、事業者側が持つ。

 

データ上では、交通費を支給している企業・団体のうち、上限額を設定しているところの平均額が1か月当たり34,260円となっている模様だ。国家公務員の交通費上限額は1か月当たり55,000円と人事院規則で定められているため、それを参考に決定している企業・団体が多いことが見込まれる。物価高や賃上げ圧力に悩む事業者等が珍しくない中では、JR東日本の運賃改定に伴ってその分を機械的に引き上げる事業者等の比率は決して高くなく、条件を据え置く割合が高くなると見込む。

 

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
次のページ 意外なセクターにも影響が
1 2

関連キーワード

  • #融資・与信管理
前の記事
第17回:「高校無償化」で加速する家計教育資金の大移動!影響を受ける意外な業種とは?
2026.01.27
次の記事
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第19回:デジタル化の否応なしの進展が中核市の人口流出を加速させる?
2026.05.29

この連載の記事一覧

いまだ見えざるリスクの芽 与信管理の“バタフライ・エフェクト”を予測する

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは

2026.09.25

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第20回:生活道路の「30キロ規制」が各セクターにもたらす意外な影響とは

2026.08.04

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第19回:デジタル化の否応なしの進展が中核市の人口流出を加速させる?

2026.05.29

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第18回:40年ぶりの運賃区分統合実施!JR東日本の運賃改定が各セクターに及ぼす影響は?

2026.03.13

第17回:「高校無償化」で加速する家計教育資金の大移動!影響を受ける意外な業種とは?

2026.01.27

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第16回 米価高騰の実態は? 飲食・製造・不動産…多セクターに広がる負担

2025.09.18

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第15回 住宅ローン金利の上昇はどのセクターにどんな効果を及ぼすか

2025.07.30

佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」
第14回 異動退職者の増加はどのセクターにどんな効果を与えるか

2025.05.28

第13回 木材利用を促す建築基準法改正は、どのセクターにどんな効果を与えるか

2025.03.27

第12回 記録的豪雨のマイナス効果はどこまで広がるか

2024.12.03

おすすめの記事

三井住友銀行で「ゴールド」が値下がりでも人気上昇、分散投資型「ライフ・ジャーニー」もトップ10に復帰

finasee Pro 編集部

「支店長! もっと自分を必要としてくれる会社に転職したいです」

森脇 ゆき

ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋は上位6本が不動、代表6資産がすべてマイナス成長だったバランス型は順位が交錯

finasee Pro 編集部

福岡銀行で「配当フォーカス」など国内株ファンドに人気、外国株は半導体・AIから関心が分散か

finasee Pro 編集部

中途半端な再発防止策も容赦なく「処分の対象」に?--他人事にしにくいプルデンシャル行政処分の3つの注目点

川辺 和将

著者情報

佐々木 城夛
ささき じょうた
オペレーショナルデザイン株式会社 取締役デザイナー
1967年東京生まれ。1990年慶應義塾大学法学部法律学科卒、信金中央金庫入庫。欧州系証券会社(在英国)Associate Director、信用金庫部上席審議役兼コンサルティング室 長、静岡支店長、地域・中小企業研究所主席研究員等を経て2021年4月に独立。2023年6 月より現職。沼津信用金庫非常勤参与。 「ダイヤモンド・オンライン(ダイヤモンド社)」・「金融財政ビジネス(時事通信社)」ほか連載多数。著書に「いちばんやさしい金融リスク管理(近代セールス社)」ほか。HP アドレスは https://jota-sasaki.jimdosite.com/
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
「支店長! もっと自分を必要としてくれる会社に転職したいです」
中途半端な再発防止策も容赦なく「処分の対象」に?--他人事にしにくいプルデンシャル行政処分の3つの注目点
三井住友銀行で「ゴールド」が値下がりでも人気上昇、分散投資型「ライフ・ジャーニー」もトップ10に復帰
「世界株式」パッシブは3カ月連続で1兆円超の資金流入もアクティブ「米国株式」は12カ月連続の流出超過=26年8月アクティブ・パッシブ流出入
静銀ティーエム証券の売れ筋で際立つパフォーマンスをみせた「モノポリー戦略株式」とは?
「支店長! 60 歳男性に対して投資信託の商品は何を提案するのが正解ですか?」
野村證券の売れ筋にみえる積極的なリスクテイク姿勢、売れ筋ランキングをかけ上がったファンドとは?
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
三菱UFJ銀行では「S&P500」や「オルカン」人気再燃、一方でバリュー株ファンドの台頭も
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
中途半端な再発防止策も容赦なく「処分の対象」に?--他人事にしにくいプルデンシャル行政処分の3つの注目点
「支店長! もっと自分を必要としてくれる会社に転職したいです」
ゆうちょ銀・郵便局の売れ筋は上位6本が不動、代表6資産がすべてマイナス成長だったバランス型は順位が交錯
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
中国銀行の売れ筋で外国株式ファンドの勢力図を再編、「世界のベスト」「WCM」が上位固定の一方で新興勢が存在感
福岡銀行で「配当フォーカス」など国内株ファンドに人気、外国株は半導体・AIから関心が分散か
三菱UFJ銀行の9月ランキングで「ウェルス・インサイト(標準型)」がトップ維持、「世界のベスト」が急浮上
三井住友銀行で「ゴールド」が値下がりでも人気上昇、分散投資型「ライフ・ジャーニー」もトップ10に復帰
【独自】世界の要人が参加「ブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム」、来年11月に東京で初開催へ
佐々木城夛の「バタフライ・エフェクト」第21回:“106万円の壁”撤廃の影響を受けるセクターとは
個人向け国債、現場はどう向き合うか~顧客対応と社内評価の実態を探る
【みさき透】今泉宣親・金融庁銀行第二課長インタビュー
投信ビジネスで培った信頼は預金の粘着性につながる
【第3回】オルタナティブ資産ファンドは何を見て選ぶのか
「支店長!お客さまが迷惑そうなので、電話をしたくありません!」
J-FLECの労作「家計見える化報告書」で“先送り”にされた2つの論点
「過去の実績上位」だけに頼らない投資信託の提案アプローチ ~10年間のデータが示すファンド成績の入れ替わりと販売現場で役立つ活用ポイント~
“霞が関文学”で読み解く金融界② 仕組債販売ルール指針案と「文脈検査の拡張」
【有識者対談】“正念場”の保険業界に学ぶ「顧客本位のビジネスモデル」の持続性(前編)
「家計の見える化」が拓く新たな地平――74項目のデータを実務の叡智に変えるために
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2026 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら