監査強化の影響じわり
株式会社想研が全国のIFA法人のビジネス状況を調査し、取りまとめた「IFAエグゼクティブ・サーベイ2025」。調査の概要を見ると残高や口座数、アドバイザー数において比較的小規模な法人からもまとまった数の回答を回収しており、業界全体の現状を偏りなく見渡すことができる一次資料として評価できるでしょう。
証券界や保険界からの意欲的な参入の流れが継続しており、金融商品仲介業の登録社数そのものは年々、増加傾向にあります。しかしサーベイの結果を見ると、全ての面でバラ色とは言えない現状も見えてきます。
24年3月末からの1年間で各種指標がプラスになった割合は、預かり資産残高が42%、顧客口座数が40.5%、営業収益は46.4%に。一方、残高や口座数がマイナスとなっているIFA法人はいずれも半数超を占め、残高増減率が-30%〜-10%は27.5%、-30%を下回るとの回答も14.4%となっています。
投資信託の信託報酬の低下傾向による業績への影響については、「影響はない」が44.9%、「影響はややある」「影響は大いにある」を合わせると約41%になり、両者はほぼ拮抗していると言えます。IFAビジネスに吹きつける逆風の正体は、インデックス型投資信託の普及による信報の低下圧力だけではなさそうです。
24年春から1年間という調査期間は、ちょうど、業界を取り巻く状況が大きく変わるタイミングでした。
日本証券業協会は24年度の監査計画で、証券会社側における仲介業務にかかる管理状況の検証について、「業務委託契約を締結する金融商品仲介業者等に対する指導・監督など適切な委託先管理を実施しているか点検する」と表明。日証協の特別会員にあたる仲介業者側についても「必要な態勢整備や委託元金融商品取引業者との連携が適切におこなわれているか等について点検する」と明記しました。それまでIFAは基本的に管轄外といったスタンスを取っていた自主規制機関が実効的な対応に一歩踏み出したことで、プラットフォーマー側を含めて業界に緊張感が走ったのです。
日証協による対応の背景には、少なくないIFA法人にとって重要な収入源となっていた仕組債に対する風当たりの強まりがありました。
当局は仕組債を一律的・直接的に規制強化こそしませんでしたが、「顧客本位の業務運営の原則」の一部ルール移行や、商品比較書面である「重要情報シート」を通じた情報提供の促進、有力地銀とその系列証券会社に対する仕組債販売に絡む不適切営業に関する行政処分を発出するなど、仕組債の手数料収入に支えられたビジネスモデルの見直しを間接的に迫っていきます。
サーベイから読み取れる事業者の戦略見直しの動きは、単なる信託報酬の低下対策ではなく、こうした規制環境の変化を念頭に、新ルールの趣旨に即した持続可能なビジネスモデルを模索するプロセスとして解釈できそうです。
金融庁幹部「IFAにも新ルール」の意義を強調
現時点のIFA業界に対する当局のスタンスを窺い知ることができるのは、2025年11月に日本金融商品仲介業協会(FA協会)が開いたカンファレンスで登壇した齊藤将彦・市場課長が登壇し、IFA法人の経営者らに向けて語った言葉です。
齊藤氏は「仕組債の販売は減少している」と指摘し、「一方、一時払い保険、外貨建て債券の販売が活性化している状況だ。必ずしもこれらが悪いと言いたいのではないが、顧客本位の観点からの販売となっているのかは注意が必要だ」と念を押しました。
また、24年11月に施行した改正金融サービス提供法で創設された新ルール「最善利益勘案義務」が、IFAを含め業界断的に規定された意義にも言及。「社会的付加価値を金融事業者の方々がもたらし、同時に自身の経営の持続可能性を確保していくため、必ずしも短期的・形式的な意味での利益に限らない顧客の最善の利益を考え、これを実現するために自らの規模・特性などに鑑み、組織運営や商品サービス提供も含め誠実かつ公正に業務を遂行しているかといった視点から我々はモニタリングをしていきたい」と述べています。
「残高増でフィー拡大」の正論と現実
経営環境に逆風が吹く中でIFA法人が打ち出す対応策については、サーベイの回答を4分類に大別できます。
第1に、新規顧客開拓や既存顧客からの追加入金といった「量での解決」によって信託報酬の下落分をボリュームで補う動き。第2に、FP業務や自社ラップサービスの採用、あるいは預かり資産連動型の手数料体系(管理口座)への移行といった、既存枠組みの販売手数料に依存しない「構造での解決」を志向する動き。第3に、商品・サービスの差異化やアドバイザーの専門性確保によって付加価値向上を図る「質での解決」、最後に、顧客本位等の観点からあえて収益維持に固執せず、環境変化をありのまま受容する現状維持のスタンスが挙げられます。
サーベイでは、登録年が古くIFAとしての活動歴が長いほど、預かり資産残高もフィー収益比率も大きい傾向が見て取れます……が、そもそもアンケート調査は事業を継続している法人が回答しているので、業界全体の新陳代謝を考える上では生存バイアスを加味する必要もあるでしょう。
「量の解決」がフィー比率の向上と収益の安定につながるといった正論を前提として顧客・残高の拡大を志向しつつも、構造の見直し、質の向上に同時に注力するのが現実策と言えそうです。
投信の付加価値を通じた質の向上に関しては、低コストのインデックスファンドが幅広い層の支持を集める中、アクティブ運用の付加価値にフォーカスした商品設計や情報提供、そして運用会社からのサポートの重要性を指摘する声が目立ちます。次の記事では、付加価値訴求の一手段として関心を集めつつあるオルタナティブ投資の現状と課題について、政策的な後押しなど環境変化を踏まえつつ、引き続きサーベイから読み解いていきます。
