東京証券取引所の規則改正によって23年6月に上場が解禁されたアクティブETFについて、金融庁は昨年8月の税制改正要望で、NISAつみたて枠で利用可能となるよう要件整備することを求めていました。しかし昨年末の大綱では、ETF全体の最低取引単位見直しが盛り込まれたものの、アクティブETFのNISA利用解禁は見送りとなりました。
日本証券業協会の森田敏夫会長は1月15日の定例記者会見で大綱の受け止めを聞かれ、「ETFは分かりやすさもあってある程度の一定の人気があり、これが良いことかどうかは分からないけれど、レバレッジが効いたものもあるので、そういう意味での人気も私はあると思う」とした上で、「これからもう一段ETFが伸びていくためには、もっと柔軟にテーマに基づいたETFを組成した方がよいのではないか」と指摘しました。
続けて森田氏は、「ただ一方でそういうのが作られすぎて、あまりにもテーマを追い過ぎると、作られたときには既にマーケットが成熟していることもあるので、そのあたりとの兼ね合いなんだろうが、そういうものがやっぱり何本かできれば」と話しました。
トランプ2期目は「現実的な対応を取るのでは」
政府大綱に先んじて与党が取りまとめた税制改正大綱では、一定の暗号資産を「広く国民の資産形成に資する金融商品」として位置付けて環境整備を進めることが検討事項として盛り込まれ、ビットコインETF解禁に向けた布石として注目を集めました。
森田会長は、暗号資産取引が日証協の自主規制の対象でないことから「個人的な見解」と前置きしたうえで、「国民の資産形成に資する資産になるかという点については、3点ほど思うところがある」と説明。「1点目に、一般的に暗号資産は発行者や裏付け資産がないことが多いということで、このようなところは注意しなければいけない。それから2点目に、株式のように経済的裏づけによって成り立っている理論が存在していないものが多いのも事実であり、こういうことも注意しなければならない。3点目に、各国の規制等の対応を受けて価格が大きく変動することがあることはやっぱり注意点として必要であり、このあたりが課題になってくるのではないか」と述べました。
トランプ大統領の2期目スタートについては、正式就任前の時点の見解として「今言われている政策、特に関税、移民防止の点でいうと、これを実際にやればインフレが起こる」と指摘。「一方、民主党政権が今回(の大統領選で)伸び悩んだ一番大きな要因は私はインフレだったと思う。アメリカの経済は好調であり、インフレが起こると経済好調でもアメリカの場合、格差が激しくなるので、低所得者の人にはインフレが効いてしまい、票の流れになってしまった。勝ったトランプ自身が民主党政権の一番の失敗はインフレ政策だったということは一番わかっているので、その意味で私は現実的な対応を取ってくるのではないかと思う」と語りました。
日本を含むマーケットへの影響については「トランプ氏がアメリカファースト的な動きを取ると、マーケット的にはアメリカが強くなる。アメリカの国内企業以上にアメリカの景気に一番影響を受けるのは日本株であり、日本における時価総額の高い企業は自動車、半導体、金融、今は損保も含めてアメリカで稼いでいる。投資家が中国に投資ができなくなると、アジアでは(投資資金が)日本に向かうという意味で、基本的にはマーケットはプラス要因だろうと思いが、何が飛び出してくるかというのはわからない部分があり、今後冷静に見ていきたい」と述べました。
また、日証協は1月14日、投資信託の目論見書や運用報告書などの紙ベースの提供義務を撤廃する改正金融商品取引法(23年11月公布)を受けて、自主規制ルールなどの改正案のパブリックコメントを開始しました。
改正金商法は、目論見書などのデジタル移行を強制するのではなく、あくまで民間側の各主体において、紙ベースを継続するか、デジタル手段に移行するかを選択できる立て付けになっています。今回の自主規制改正案では、紙を使わない情報提供において顧客の承諾を得るプロセスなどについて見直す方向性を示しています。パブコメは2月12日まで実施し、3月中に内容を審議する予定です。