昨年末に政府が策定した「資産運用立国実現プラン」では、インベストメントチェーンを構成する各主要プレイヤーを対象に、新たに3つのプリンシプルを策定する方針が提示されました。本WGで議論しているプリンシプルは、適切な商品管理体制を意味するプロダクトガバナンスの観点で、組成前後の対応を事業者に促すものです。
これまでの議論で、想定する顧客の属性を具体的に特定したうえで、組成会社と販売会社が連携して商品の妥当性を継続的に検証すべきとの意見が上がっていました。これを踏まえ今回の会合で事務局側が提示したのが、以下5つの「補充原則案」です。
補充原則案1「基本理念」
経営者のリーダーシップの下、金融商品提供に関する理念の明確化
補充原則案2「体制整備」
プロダクトガバナンスの実効性を確保するための体制整備、金融商品の組成・提供・管理の各プロセスにおける品質管理体制の整備
補充原則案3「金融商品の組成時の対応」
金融商品の組成時における商品性の検証や想定顧客の特定、組成会社・販売会社間の情報連携の促進
補充原則案4「金融商品の組成後の対応」
金融商品の組成後における商品性の検証、組成会社・販売会社間の情報連携による運用・商品提供等の改善
補充原則案5「顧客に対する分かりやすい情報提供」
運用体制やガバナンス等に関する顧客への分かりやすい情報提供
加えて事務局は、プロダクトガバナンスの「基本的な考え方」として、投信に限らず「債券等も含めた金融商品をスコープに入れるべきであり、特定の金融商品を排除するものではない」との見解を提示。出席委員からは「より具体的な形で金融商品の製造時や販売時の留意点について書かれており、(投信ではない)他の金融商品との関係においても妥当する」と、新たなプリンシプルを幅広に適用する方向性に賛同する趣旨の意見が上がりました。
オブザーバーとして参加した業界団体、自主規制機関からも、事務局が提示した方針におおむね賛同する意見が相次ぎました。ただ、運用会社向けに始まったプリンシプル策定の議論が、販売サイドに射程を広げつつあることについて、一部出席者から慎重な議論を求める声も聞こえました。
日本証券業協会の幹部は「販売会社と組成会社の間の連携については、そのコストが最終的には顧客に転嫁されることも踏まえ、商品の複雑さやリスク等の金融商品の属性の特性に応じて、対象商品の範囲、連携すべき情報の粒度や頻度について、コスト・ベネフィットや実務面のフィジビリティの観点から、引き続き証券業界との協議をお願いしたい」と求めました。
生命保険協会の幹部は「(金商法に準じた規制体系となっている)特定保険契約については、商品の複雑さやリスクといった商品の特性を踏まえて取り組みを進めていく必要があると見ている」と説明。そのうえで、今年4月の自主ガイドライン改正により、特定保険契約に関する想定顧客属性の明確化や事後検証プロセスの厳格化がルール化されるなど、業界側で既に取り組みが始まっている点を強調。新プリンシプルの対象に保険を含める是非については言及を避けつつも、「(こうした取り組みを)販売会社とともに進める中で、生命保険協会として引き続き顧客の最善の利益を踏まえた対応を進めていきたいと考えている」と述べました。