息子の野球に追われる毎日
「ほら、水筒忘れてるよ。あとタオルも持った?」
「分かってるよ」
土曜日の朝、佳織は息子の博樹と会話をしながら玄関とリビングを何度も行き来する。
小学1年生になった博樹は、今年の春から地元の少年野球チームに入っていた。本人の希望で入ったこともあり、練習にも休まず参加し、とても楽しそうにしていた。
ただし佳織のほうはそうもいかない。練習の日は朝から飲み物や着替えを準備し、帰ってくれば泥のついたユニフォームを洗って、翌日に練習があればまた準備をする。試合の日には朝早く家を出ることもあり、ときには保護者の当番として練習中にグラウンドに行って子どもたちのお世話をしたりしていた。
さらに夏休みに入ってからは、練習の日数も増え、暑さ対策のために大きめの水筒や多めのタオルを用意するなど、やることはますます増えていた。博樹のためとはいえ、調剤薬局での事務仕事や家事をこなしながら、これらのこともやらないといけないのはなかなかの負担だった。
博樹が野球を始めるまでは土曜日に家族で出かけたり、家で一緒にテレビを見たりゲームをしたりして過ごすことも多かったが、最近の週末の予定はほとんど野球で埋められている。毎年ゴールデンウィークには、健吾の実家に家族3人で泊まりに行くのが恒例だったが、今年は野球の練習試合と重なったため、帰省を取りやめることにもなっていた。
「おーい、博樹、もう時間だぞ」
「あ、うん! それじゃ行くね!」
夫の健吾の言葉に博樹は反応し、リュックを背負って立ち上がった。
健吾は地方銀行の支店に勤めていて、基本的には土日祝日が休みなので、休日の送迎などは健吾の担当だった。彼が非協力的だったらとっくにパンクしていたと思うので、佳織は本当に感謝している。
