義母との共同作業で一気に進展

実は数日前、どうにもならなくなった沙織は、頼子へ直接連絡していた。彼女が以前、縫製工場で働いていたことがあると聞いていたからだ。事情を説明すると、頼子は迷うことなく手伝いを引き受けてくれた。

「だって、このままじゃ間に合わなかったから」

「でも、わざわざ泊まり込みで?」

「誰かさんが頼りにならないから仕方ないでしょ」

頼子にぴしゃりと言われ、健太は口をつぐんだ。

夕食後、頼子はダイニングに広げられた衣装をじっくり確認した。沙織は縫い目の乱れや形の悪い裾を見られるのが恥ずかしく、落ち着かない。

「すみません。何度もやり直したんですけど……」

「初めてなら十分よ。全部ダメってわけじゃないし」

頼子はそう言うと、ほどく部分と残す部分を手際よく分けていった。

「ここは縫い直せば大丈夫。こっちは布を少し足しましょう」

家庭用ミシンを動かし始めると、その違いはすぐにわかった。布を送る手つきも、縫い代をそろえる動作にも迷いがない。

「お義母さん、本当にすごいですね」

「仕事で毎日やってたからね。沙織さんは、こっちのまっすぐなところお願い」

沙織も言われた箇所を縫い、仮留めや飾り付けを担当した。頼子が難しい部分を引き受けてくれるだけで、作業は驚くほど順調に進んだ。

翌日も2人で作業していると、健太が横からのぞき込んだ。

「そんなに手間かかるもんなの?」

頼子がすぐに顔を上げる。

「簡単だと思うなら、あんたがやれば?」

「いや、俺はできないけど」

「だったら口出さないの」

健太は何も言えず、そのままリビングを離れていった。

さらに翌日、衣装はようやく完成。緑を基調にした服は、裾もきれいに整い、妖精らしい軽やかさが出ている。

「未来、着てみようか」

「うん!」

鏡の前に立った未来は、くるりと回って満面の笑みを浮かべた。

「かわいい! これ、ママとおばあちゃんが作ったの?」

「そうだよ。おばあちゃんのおかげできれいにできたの」

「ママと2人で頑張ったのよ」

未来は頼子の手を握った。

「おばあちゃんも学芸会、見に来てね」

「もちろん。楽しみにしてるわ」

嬉しそうな2人を見ながら、沙織はようやく息をついた。

数日前まで完成するかどうかさえ分からなかった衣装が、今は未来の体にぴったり収まっている。その姿を前にして、ずっと胸に張りつめていたものが、少しずつほどけていった。