出世を確信して浮かれる夫

推薦の話を聞いた日の夜、家に帰ると妻の美咲が出迎えに来てくれた。

美咲とは大学からの付き合いで、結婚して2年になる。結婚を機に仕事を辞めた美咲は現在、専業主婦として家事をしながら翔平を支えていた。

「おかえりなさい。ご飯、もうすぐでできるからね」

革靴を脱いだ翔平は美咲に自慢げな笑みを向けた。

「美咲、実は俺、大型案件のプロジェクトリーダーに選ばれたんだ」

「え? そうなの?」

「まあ正式決定はまだだけどさ、相沢さんから直接俺に任せたいって言われたんだ」

翔平が胸を張って伝えると、美咲は手を叩いて喜んだ。

「すごいじゃん! おめでとう!」

「やっぱり見てる人は見てるんだよな〜。あ〜でもこれで忙しくなるかぁ」

気だるそうに翔平は首に手をやった。

「はいはい、もう調子に乗ってる」

「完全に出世コースに乗ったなぁ。来年あたりにはもう部長とかなってるかも」

翔平の軽口に美咲は頬を緩ませていた。

「じゃあ偉くなったら美味しいご飯でもごちそうしてもらおうかしら」

「それくらいお安いご用だよ。これから俺が美咲にもっといい暮らしをさせてやるからな」

美咲は笑いながらリビングに歩いて行った。冗談交じりに言っていたが、翔平は本気でそうなると思っていた。今の自分なら何をやってもうまくいくような気がしていた。